愛してるって言って | ナノ





指導2




「ねぇアイラちゃんとオーナーってどういう関係?」


そう聞いたサクラさんは、心底面白いものを見つけた!みたいな顔に見えなくもない。

それに、そう聞かれたところで、私とオーナーの関係なんて、別に何もない。

そんな疑われるようなことは何一つない…―――

そう、なに一つ…――――


「やっぱできてんの?」


サクラさんの声にハッとして慌てて首を横に振った。

あの高級マンションには、オーナーは帰ってこない。

それが分かった私は、本当に家を提供されているんだと納得。

そしてそれは、絶対にナンバー1にならなくてはという使命に代わりつつあった。

母がしていたこの仕事、私ができないわけがない。

そうやって自分の中で野心を燃やすことで、みんなの意見を素直に受け入れることができた。


「まさか、できていませんよ」

「なんだ、つまらない。アイラちゃんとオーナーができてたらリンの鼻を押しやってやれるのに」


そう続いた言葉に、私は首を傾げた。

リン?

目の前で煙草を取り出したサクラさんに、ハッとして私はすぐに手に持っていた、今ほど渡されたばかりのライターをカチっとつけて差し出した。

そんな私に、ちょっとだけ驚いた顔のサクラさん、すぐにフッと笑って私から火を受取ってくれた。

軽く煙草を吸って、それからゆっくりと白い煙を顔を上に向けて吐き出した。


「うちのナンバー1のリン。オーナー溺愛してんのよ、ムカツクくらいに」


タメ息混じりで吐き出すサクラさんの言葉に、その中に恋愛感情が見えた気がした。


「そうなんですか」

「でもうちは…っていうかどこも一緒だけど、スタッフ同士の恋愛は禁止だから、見つかればその時点で風紀罰金よ。決定的な証拠なんて出てきやしないけど、オーナーが熱入れてるって感じ。それを鼻にかけてるリンが気に入らないの、あたし達…」


どうやら、オーナーを気に入っている人はサクラさんだけじゃないらしい。

あんなヤクザの端くれみたいな人が、この世界では人気があるんだって、関心してしまう。

中途半端に怖いぐらいなら、ヤクザの方がまだマシ?

不意に浮かんだテツヤさんに私はブルブル頭を振った。




- 10 -

prev / next


TOP