愛してるって言って | ナノ





CLUB ISLAND1




大きなドアを開けると広がるそのフロア。

正面玄関からオーナーとお店の中に入った私は、その煌びやかな世界に眩暈を覚えた。

大きなシャンデリアを何個も飾ってあるその下には、高級そうなソファーとテーブルが何個も敷き詰められていて、結婚式の披露宴会場のようだった。

まだお店の始まる時間よりも遥かに早いらしいのに、このフロアには、黒いスーツを纏った男たちが勢ぞろいしていた。


「こんばんは、店長の黒木です」


ニッコリ微笑んでそう言ってくれたこれまた長身の人。


「お前の担当頼んである。この店を実質上仕切ってるのはこの男だから分からないことがあったら何でも聞いて」

「はい、宜しくお願いします」


そう頭を下げた私に、黒木店長はもう一度ニッコリと微笑んだ。

それから黒服と呼ばれているのが、フロアボーイを取り仕切っているナオトさん。

他にもバーテンさんや、お会計担当のキャッシャーさん…を紹介された。

ヘアメイク担当のケンチさん。

そして何故かここにいるあのヤクザ、テツヤさん。


「お前、源氏名どうすんの?」

「源氏名ですか?」


テツヤさんは、あの時とは違う威圧オーラはあるもののそれを極力私には見せないように口端を上げてくれていて、今日は怖くなかった。

源氏名と言われて訳も分からず私は黒沢さんを見た。

私の視線に気づいた黒沢さんは「あぁ、お前の源氏名は“アイラ”ね」そう言う。

でもその瞬間、ドッとフロア内が沸いた気がして…


「お前、ISLANDを背負って立つなんていい度胸だなぁ! まぁ、いいんじゃん! 合ってるよ」


テツヤさんが私の肩に腕を回してクククって笑っている。

不安いっぱいなのは私だけなのか、みんなから拍手が上がって…


「が、頑張ります」

「永久指名してやろうか、お前」


ニコってテツヤさんが又微笑んだ。

専門用語すらさっぱり分からない私は、覚えることが沢山ありすぎて頭がパンクしそう。

でも、やると決めたからにはやってやるし、100万円なんてすぐに稼いでやる!!


意気込んでいた私に、翌日用意されたのは、ナンバー入りしているキャストの地獄のような指導だったなんて…




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