愛してるって言って | ナノ





夜の街3




今時19歳で処女なんて笑えない。

高校生だって、いや、今はもう中学生でさえそれを経験している子は多いはず。

でも母親が男に落ちるところばかりを目にしてきた私は、完全に男は騙すものだと思っているから、勿論今まで付き合った男もいやしない。

だからそういうことを経験しようとも思っていないし、ましてや好きな男なんて今まで出来たことがない。

男に惚れて落ちていく女を誰より間近で見ていたせいか、どんなイケメンと呼ばれる人と会っても私は何の感情も生まれないでいた。

だからもう、私は恋なんてできない身体なんだと思っている。

思っているけど、そんなこと、今まで口にしたこともなく、これからも言う気すらなかったのに…

言ってしまった言葉は取り消せなくて、だから恥ずかしさばかりが湧き上がって…

そんな私をキョトンと見た目の前のこの人は、不意にお腹を抱えると、ブハハハハハッ!!って笑い出した。


え?なんで?


呆気にとられている私に…「合格だな」って言葉。

訳も分からない私に、さっきまでの威圧感のない顔を浮かべて、ほんの少し口端を緩めた。


「仕方ない、使い物にならない奴を雇う気はない。けど仕事やる気はあるんだろ?」

「…はい」

「お前何歳?」

「19です」

「OK! 20歳ってことにして、こいつの店で働け、家は提供してやる」


“こいつ”と指を指されたのは、この人のすぐ後ろ、長身黒スーツの男が私をジッと見据えていた。

上から下までジロジロと舐めるような鋭い視線を飛ばされて、何だか裸にされたような感覚になった私は自然と顔を赤くしてしまう。

でも、その大きな瞳から、どうしても目が離せない…―――


「名前は?」


そう聞かれて、「ユヅキ」そう答える。

次の瞬間、フワっとカレが笑って、その目は優しさを帯びているようで、ドキっとした。


「オレがお前をナンバー1にしてやる、宜しく、ユヅキ」


スッと手を差し出したカレに、私は意味も分からず、でもその手をソッと握り返した。




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