愛してるって言って | ナノ





夜の街2





「…止めろ! 店に連れてけ。住み込みで働かせてやる、お前」


まるでこの世界のボスとでもいおうか、こんなに威圧的な視線を飛ばす人間を初めて見た。

綺麗な顔と美声を持つその人がそう言うと、その場にいたスーツが「へぇ」って掛け声をかけて、私はそのまま連れて行かれるハメに。

でも、変に抵抗して無駄に殺されるのは御免。

震える身体とは正反対、気持ちで負けないように、ずっと強気なことを思っていた。


「入れ」


そう言われて腕を無駄に引っ張られた。

転びそうになる身体を反射的に手をついて止める私の目には有り得ない光景…。


「なにこれ…」


それ下着じゃないのよ!ってくらい薄いペラペラのワンピースを纏った女たちの写真が壁に貼られていて、それを選ぶ男たち。

そのどれもが、ヲタクというか、おっさんというか…


「選ばれた女は、こん中で一晩過ごすもあり、外で客と過ごすもあり、どうだ、お前にもできるだろ?」


さっきのボス、私の肩に腕を回して耳元でそんな説明。

されても、無理なもんは無理。

だってここ、やっぱりなピンク街の一角、風俗店じゃん!!


「あの私ごめんなさい、無理です…」

「あ?」


途端にド低い声でそう凄まれて…

空気が変わった気がした。


「だったらさっきぶつかったとこ、病院行くから慰謝料100万払えよ」


な、横暴な!!

有り得ない!!

そう思っていても、そんなことを簡単に口に出せるほど馬鹿じゃない。

選択肢は100万円か、売りか…


「あの、今すぐは無理です…」

「じゃあ働いて稼げばいいだろがっ!」

「ごめんなさいっ、私シたことないんですっ!! お金になんてなりませんっ!!」


怒鳴られて吃驚した私はつい言ってしまった、内緒にしていたことを…。




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