愛してるって言って | ナノ





夜の街1





「お願いします! やる気はあるんですっ!」


深く頭を下げる私に「他あたってくれ、悪いね」そう冷たい声を出すここの主。

小さく息を吐き出して顔を上げると、私は仕方なくそこを背にした。

もう何件目だろうか?

やっぱ今時住み込みでバイト募集しているところなんてないか…。

あーお腹空いた。


眠らない街、新宿歌舞伎町。

色とりどりのネオンが眩しいくらいに、夜なのに昼間みたいな明るさを発している一角。

行く宛もなく目に入った店に飛び込みで住み込みバイトをお願いしてきたけど、そろそろ疲れてきた。

仕事見つかるまではお金使えないし、…お腹空いた…

さっきから空腹のせいか、思考があまりちゃんと回っていない気もする。

今日は諦めてまた明日から探す?

っていっても、泊まる場所もない。

こんなんなら友達の一人や二人作っておけばよかったなんて今更後悔してしまう。

でも、身内を信用できない私が、他人を信じることなんてできるわけもなくって、結局与えられた居場所なんてどこにもなかった。


冬だったら危うく凍死のところ、今は夏。

野宿したところで死ぬなんてことはない。

この際公園とかでいいや!

そう思って勢いよく立ち上がった瞬間だった。

バスって、ちょうど目の前を通っていた人にぶつかった。

いててて…

もう、何すんのよっ!!

そう言ってやろうと思って顔を上げた私に、派手なスーツ姿の男たちがこっちを睨んでいる。


「てめぇ」


ウソ、これはマジでヤバイ!!

絶対ヤバイ!!

場所が場所だけに、すこぶるヤバイ!!


「あの、ごめんなさいっ!」


さっき頭を下げたよりももっと大袈裟に頭を下げる私に、「ざけんなっ!」って怒鳴り声。

ビクっと身体が震えて頭が上げられない。

そんな私の腕を引っ張り上げられて、顔を見られる…。


マジで、殺される!?




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