安心できる温もり3 「失礼します、アイラさんお願いします」 しばらくしてナオトが私を迎えに来た。 「ナオトー。お前偉くなったな?」 テツヤさんのそんな意味深な言葉にナオトは真っ直ぐにこちらを見て「藤堂様がお待ちです」あえてなのか、テツヤの言葉を無視している。 そんなナオトに対してクスリと笑うと「ま、いーけど」ポンッと私の背中を押した。 それから続けてこう言うんだ。 「アフター楽しみにしてんぞ」 ……アフターがなければ普通にナオトのマンションに帰る所だって、バレてるんだろうなって。 ケイジにすらバレていたし、そもそも恋愛初心者の私に隠すことなんてきっとできない。 でもアキラだけはバレたくない。 「ユヅキの取り巻きって、普通じゃないよね。俺殺されねぇかな…」 腰に腕を回して私を藤堂の席へと移動するナオトは眉毛を下げてちょっとだけ弱気だ。 「それはないでしょ。さすがに大事な黒服に手かけることはテツヤさんだってないよ?」 「関係ねぇよ。女の為なら黒服なんていくらでも代わりがいる…」 「ナオトの代わりはいないよ。少なくともこのお店じゃ。ナオトがいるだけで安心できるもん、私だって」 私の言葉にいつもながら困った顔のナオト。 キスしたい!って言い出しそうな顔してる。 「ユヅキって無意識でいうのズリーよな。俺やっぱお前のこと好きだわ…」 スッと誰かが私達の横を通り過ぎたからもしかしたら聞かれてたんじゃないか?って思うけど、嬉しそうなナオトの顔は可愛い。 キスの代わりになのか、お尻を一撫ですると、膝まづいて「お待たせ致しました、アイラさんです」藤堂に頭を下げた。 「藤堂さん、お待たせしました!」 「アイラちゃん待ってたよ!」 間もなくお店が終わる時間だっていうのに、ちゃんと最後まで私だけを指名して待っててくれる藤堂は有難い。 隣に座って腕を絡めると藤堂が生唾をゴクリと飲み込む音が聞こえた。 「ちょっと充電中…藤堂さん、少しだけこのままでいてもいい?」 胸を軽く押し付けたまま下から上目遣いで見つめると、真っ赤な顔で藤堂が「好きなだけいいよ」なんて答えた。 気づいたら前川の姿はお店からいなくなっていて、もしかしたらもう、前川と会うことはないのかもしれないなんて思ったんだ。 |