愛してるって言って | ナノ





ロマネコンティ2





翌日。



「おはよーアイラちゃん」


健ちゃんの第一声にホッとする。

何もなかったんだって言い聞かせて私はニコリと微笑んで「健ちゃんおはよう!」そう言ったらギュっといつも通りのハグをくれた。

既にメイクを終えたであろうサクラさんがスマホをいじっていて。

ふと浮かぶテツヤさんに私はサクラさんの所へ歩み寄った。


「サクラさんおはようございます」

「おはようアイラちゃん」

「あの…」

「なに?」

「あの…」

「え?」

「…何でもないです」


何て言ったらいいのか分からなくて。

テツヤさんとただ一緒にいたってだけだし。

無言でいる私を不思議そうに見ていたサクラさんは小さく溜息をついて首を回した。


「何か言いたそうな顔だけど…?」

「テツヤさんと…一緒にいましたか、昨日…」


私がそう聞くとサクラさんの顔が見て分かるくらいに歪んだ。

でも睨むでもなく、目を逸らすでもなく私を真っ直ぐに見ているサクラさん。

一呼吸おいてから「いたわよ…」小さくでも堂々と答えた。


「言っとくけど、アイラちゃんとオーナーみたいな関係じゃないからね、私たちは!」


言われて何となく今度は私が苦笑いな気分だった。

サクラさんは今も私とアキラがそういう関係だと思っていて。

あの時はまだ違ったけど、今は否定もできなくて。


「私とオーナーもそんなんじゃ…」


でも絶対にバレちゃいけない関係だから結局自分の気持ちに嘘をつかないとダメなんだって。

いつもならニヤって笑ってなんかしらからかってくるであろうサクラさんは、今日はそのまま何も言わずに席を立ってしまった。

そのままフロアに出たのかもうスタッフルームには戻ってこなくて。



「アイラ、指名だ」


気づくとケイジの声がしたんだ。


「あ、はい」


立ち上がって香水をふると「頑張ってね」健ちゃんがギュっと抱き締めてくれる。


「うん、いってきます」


そう言って私はアイラの仮面をつけて戦場へと出向いたんだ。




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