愛してるって言って | ナノ





ロマネコンティ1




目の前のナオトが冗談を言っているようには当たり前に見えなくて。


「な、んで……」

「割がいいんだよ、ISLANDよりも」

「でも、私はISLANDでナンバー1を取るためにっ」

「ユヅキ」


ナオトの手がテーブルの上で重なった。


「今すぐじゃなくていいから、ゆっくり考えてみて」


真っ直ぐに私を見つめる目はいつにもまして真剣で。

心の奥底にあったであろう不安が触れられたことで薄れていく。

ギュッと握られた手を引き寄せて私をその胸に閉じ込めるナオト。

久しぶりのナオトの温もりに、さっきまでアキラのところにいたことに罪悪感がうまれる。

ゆっくりと私を覗き込むナオト。

頬に手を添えてふわっと微笑むその顔に罪はない。


「一人にしてごめんなユヅキ」

「え?」

「オレが幸せ教えてやるって言ったくせに。ちょっと大人気なかったっつーか。店長にヤキモチっつーか…」

「ナオト…」

「マジなんだユヅキのこと…だから絶対ぇ誰にも渡さねぇ…」


知ってるのかもしれない。

ナオトは私がケイジじゃなくてアキラとそうなっていることも…。

みんながみんな私達のこと…知ってるのかもしれない…そう思うとすごく怖くなった。

アキラが何をおいても私を守ってくれるって保障もない私たちの関係。


「明日は同伴あんの?」


ナオトの問いかけに小さく縦に首を振る。

藤堂に毎日同伴頼んでおいてよかったって今さら思う。

…少しでもナオトと一緒にいたら私はきっと流されてしまだろうから…。




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