全てを忘れる愛してる2 「心ここにあらず…」 カチっと間接照明をつけたアキラがそう呟いた。 同時に広がる煙草の煙。 大きなダブルベッドの枕を背にふう〜っと煙を吐き出すアキラは色っぽい。 色々聞きたいのに臆病になってしまうのも、恋のせい? 何も言わずに黙っている私の頬にアキラの指がフワリと触れた。 「どうした?」 「………」 「泣かせた?」 頬の指が私の目の下をプクって押して…。 シャワー浴びて誤魔化したのに、アキラには何も隠せないんだって。 いつもは強引で強情で気遣いなんてしてくれないのに…何で今更優しいのよ…。 調子が狂う。 でも…こんなアキラが欲しかった。 「アキラ愛してる」 自然と口から出た言葉だった。 私の言葉にフって笑って煙草を灰皿に押し付けると、そのまま私を組み敷いた。 「レイラとはもう終わってる。オレの言葉信じらんねぇか?」 思いがけずそんな台詞を言われてちょっと動揺してしまう。 アキラの中で終わっていても、レイラの中では終わっていないかもしれないし…。 「どうして別れたの?」 「お前がいるから」 「え?私…?」 「ああ。お前の存在がでかすぎて、それに耐えきれなくなったアイツがオレから逃げた。最初からそのつもりで付き合ってた」 「…よく分からない」 「今は分からなくてもそのうち分かる。まだその時じゃねぇ。オレのことだけ信じてろよ」 「アキラ…」 「…ん」 「アキラ…」 「ユヅキ…愛してる」 一度しか言わないって言ったその言葉を、繰り返し言ってくれるアキラ。 その言葉だけで、私の中がアキラでいっぱいになるんだ。 私のモヤモヤした気持ちがアキラの「愛してる」で溶けてゆく。 それほどまでに愛する人の言葉は大きくて素晴らしいものなんだと…実感する。 私の上で妖艶な顔を見せるアキラに抱かれているのは私だけだと…信じていたい。 アキラしか知らない私の身体を知り尽くしているようなアキラの愛撫に、頭の中が真っ白になっていく。 辛い思いをするなら、この人を好きにならなければ…そう思うけれど、こうやってアキラの温もりを感じられるこの瞬間を知ってしまった私はもう、この腕から離れられないんじゃないかって… 「アキラッ…」 「いいよっ、イケよっ…」 「ウンッ…」 上がる呼吸を繰り返す私の上で、アキラがビクンとした。 携帯が鳴っていることも知らずに… |