愛してるって言って | ナノ





優しさの定義3




「どう…して…?」


泣きそうな健ちゃんを見上げる私も、どうしてか泣きそうで。

もしかして知らないうちに私が健ちゃんを追い詰めてしまっていたのかと思うと、至極胸が痛いんだ。

でも健ちゃんは私を見下ろしたまま静かに口を開いた。


「僕…女性が苦手っていうか…勃たないの、女相手じゃ…。だからもうずっと女の人とはそういうことできないって思ってた。でもあの日、アイラちゃんが服を破かれてたあの日…一人で抱え込もうとするアイラちゃんの強さに…胸がキュンってして…ドキドキしたんだ。それからずっとアイラちゃんのこと見てた。だからアイラちゃんが誰を想っているのかも分かってたし…。僕なんて相手にされるわけないって分かってるよ…。でも身体が勝手に反応しちゃう…こういうことしたいと思うのも、アイラちゃんだけなの…タスケテよ、僕のことっ…―――」


ポタっと健ちゃんの瞳から流れた涙が私の頬に零れ落ちた。

そのままゆっくりと私に顔を寄せる健ちゃん。

どうしよう…―――

こんな壊れちゃいそうな健ちゃんを拒むなんてできる?

いつだって私の見方でいてくれる健ちゃんを拒むなんて私にできる?

自分の傷を私に打ち明けてくれた、そんな健ちゃんを拒むっていうの?


「…いいよ」


できるわけない。

目を閉じて私は健ちゃんに身体を預けた。

何も言わずに泣きながら私にキスをする健ちゃんを、ギュウっと背中に腕を回して抱きしめた。

ちょっと興奮しているのか、抑えのきかないような健ちゃんは、私の舌をチュっと絡め取っていく…


「ンッ…ゆっくりっ…慌てないでっ…」

「ごめっ…」


私の言葉に少しだけ我に返ったようで、首筋に舌を這わせた瞬間、思わず身体がビクンっとしてしまった。

それに気づいてか、そっと私の上から降りる健ちゃん。

俯いて唇をギュっと噛み締めているんだ。


「健ちゃん…」

「ごめんアイラちゃん。僕どうかしてる…」

「…後悔してるの?」

「…分かんない。けどこのままシちゃダメだと思う。アイラちゃんの優しさ…嬉しいけど…―――――逆に辛い…」


…よかれと思ったはずなのに、健ちゃんの言葉に自分がバカだと気づいた。

健ちゃんの為に…

健ちゃんが望むなら…

そんな自分のエゴで、結局は健ちゃんを傷つけただけなんて…。


「ごめんなさいっ」




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