愛してるって言って | ナノ





居場所3





1時間待ってみたけど、ケイジがここに帰ってくる気配はなくて…。

あのマンションに帰ろうって。

ここにいても何も変わらないし…。

ナオトの帰ってこないマンションで待つよりは、アキラを待っていたいって、それは自分に思い込ませていたのか、言い聞かせていたのか…


自分が一人きりになって、誰からも必要とされていないんじゃないかって。

私なんていてもいなくてもこの世界は当たり前のように回っていく。

私が今ここで寂しいと思っていることすら、誰一人気づいていなくて…。

どうしてなのか分からないけど、今日は一人でいたくなかった。

こんな真夜中に女一人で何やってんだか…。

コンビニに入って飲み物を買っている自分が映った窓に、タメ息をついた。

笑っちゃう、こんな姿。

世界に自分が一人っきりみたいな、そんな顔。

あたかも自分が一番不幸なんじゃないかって、そんな顔。

でも本当にそうなのかも………


「………」


大通りに面したコンビニの向こう側、歩道橋の下に止まっている車は、私が愛するアキラの車。

運転席には勿論アキラが座っていて、助手席には知らない女の人。

なんとなく…―――私に似ているその人が誰なのかはすぐに分かった。

だからアキラの急用のわけもすぐに分かった。

あの人の誘いだから受けたんだって。

私との先約よりも、あの人との逢瀬を優先させたんだって。


悲しいはずなのに、涙もでない。

目はずっとそれを追っていて、胸がチクチク痛いのに、涙なんて一滴も出てこない。

むしろ現実を知ったんだって、自分の中で納得してしまう。

ケイジの言った言葉が真実なんだって。

だとすれば、ナオトも私の他に恋人がいて、きっとその相手はサワラで。

さっきのお客は、ナオトに連れてきて貰ったあのバーの店長さんだ。

きっとサワラともそこで逢っていたんだって。


「なんなのよ、もう…」


ぐちゃぐちゃだ、頭ん中。

誰かタスケテ…――――


一人にしないで…






「アイラちゃん?」


不意に腕を掴まれて、振り返った私の前、心配そうに顔を覗き込んできたその人に安心して、今まで堪えいたものが一気に溢れだした。

ブワっとさっきまで全然出なかった涙を見て吃驚するその人…。


「健ちゃん…タスケテ…」


その胸に飛び込んで行ったんだ。




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