愛してるって言って | ナノ





勝敗1





「前川さんでも…あのお金かかっちゃいますよ。私は嬉しいですけど」


最初は控えめに…。


「アイラちゃんの為ならボク…」


そう言って鞄からチラリと見せたのはゴールドカード。

それを見てわざとらしく吃驚した顔をする私に、通りすがりにケイジがブッて笑う。


「前川さんそれ…初めて見ました私。すごいんですね…」

「それほどでもないよ。あのさアイラちゃん…アフター…ボクに譲ってくれない?」

「え?」

「タワーで対決してボク絶対勝つから、だから今日のアフターボクにくれない?」

「…それは…」


チラリとケイジを見ると「藤堂様に確認して参りますね」なんて笑うんだ。

ケイジってば私が前川とアフターに行ってもいいっていうのかな…。

何か複雑。


「OKだそうです。では前川様のタワーお作り致しますね」


ケイジがそう言ってすぐ、リュウジくんがタワーにシャンパンを流し込んだ。

そしてまたこのタイミングでケイジが私を藤堂の席に移動させる。

そうして、他の指名客の相手もしながら私のアフターをかけたシャンパンタワーの行方が終わりを告げた。





「もし藤堂が負けたらどうするつもりだったの?」


閉店したお店でケイジに詰め寄った私を軽くあしらうその手。


「勝敗なんてはなっから分かってたに決まってんだろ。ユヅキをこれ以上危ねぇ目に俺が合わせると思う?」

「…分かってたって?」

「だって藤堂ブラックカードだぜ」

「…な…もう…それならそうと言ってよ」

「いんだってお前は俺の言うことだけ聞いてりゃ。アフターだろ?また藤堂の所まで送ってやろうか?」

「いいわよ、大丈夫だって!!」

「あっそ、んじゃ気をつけろよ」

「うん。行ってきます」

「おう」


勝敗は当たり前に藤堂だった。

勝負に負けた前川はしょんぼりして、でも「明日も来るから」そう言って一人帰って行った。

逆に勝負に勝った藤堂は上機嫌で…。

私をお洒落なバーに連れてきた。

カウンターに座って今日の話をしていた私は、ふと奥の個室に目をやった。

いたのはサワラと、最初にタワーを頼んだお客…。

あの人やっぱり見たことある…――――カラン…ドアが開いて入ってきた人を見て吃驚する…。


「…ナオト…」


真っ直ぐにサワラ達の方に歩いて行くナオトに、私の心臓がざわっとしたんだ。




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