愛してるって言って | ナノ





安心感1




それからしばらくしてボーイさんがサワラの所よりも大きなシャンパンタワーを私と藤堂のテーブルに持ってきた。

バーテンのリュウジくんがニンマリしながら一番上からドンペリを綺麗に流し込んでいく。


「素敵…藤堂さんありがとう」

「いんだってアイラちゃんの為ならなんだって惜しまないよ俺」


藤堂の言葉にまたケイジがニヤリと笑った。

そしてこのタイミングでケイジが私を呼んだ。


「アイラさんお願いします」

「え、今来たばっかじゃんアイラちゃん」


当たり前に不機嫌になる藤堂にニッコリ笑うケイジ。


「アイラは当店でも人気のキャストです。指名が重なるのはお客様もお分かりかと?アイラの指名が増えるほど、アイラも嬉しいはずで、それがお客様もの望みなんじゃないんでしょうか?」


ケイジの言葉に藤堂は唇を噛んで頷いた。


「藤堂さん、アフターではずっと一緒だから、私行ってきますね」

「分かったよ、アイラちゃん。でもまた俺の所に戻ってきてね?」

「勿論ですよ!じゃあ失礼します」


私を誘導するケイジは耳元で小さく囁く。


「前川にもあのタワー頼ませろ。んで藤堂と張り合わせて稼いでこい!いいな?」

「うん、分かった」

「俺がちゃんと見ててやるから安心してやってこいよ」


クシャって健ちゃんのセットした髪を触って…。

急にそんな優しさを向けられてドキっとしてしまう。

ケイジの手が肩から腰に下がって最後にギュっと私の手を握った。

何だかキスをされるよりもドキドキしたなんて。


案内されたのは、前川の席。

私を待っていたんだろう前川は煙草を5本も吸っていて、私を見るなりパアーと顔を明るくした。


「お待たせ致しました、アイラさんです」


ケイジに背中を押されて椅子に座りこむ私。


「前川さん、こんばんは」


たぶんまだケイジがそこにいるから…警戒しているような顔で。

あの日、ケイジが私を助けてくれたのを前川は忘れていない。


「アイラちゃん逢いたかったなぁ」

「前川さんってば」

「アイラちゃん今日アフター行ける?」


キタって。

ケイジはスッと立ち上がって私の前からいなくなった。


「それが…あちらにいる藤堂さんとお約束が。シャンパンタワー頼んでくれたあの方です…」

「あのタワーボクも入れられる?」

「勿論です」

「じゃあ入れて」




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