愛してるって言って | ナノ





シャンパンタワー1




「アイラちゃん待ってたよ!」


藤堂の隣に座った瞬間、前川が来店して他の席に通された。

ジイ―っと私を見つめるその視線は舐めるようで気持ち悪い。

今までそういう困ったお客さんにつかなかったからどう対応したらいいのか分からないのが事実で。

リンやサクラさんはそういう客をどう扱っているのか、気になった。


「アイラちゃんもしかしてあの人だっけ?」


藤堂が私の視線を追って前川を見つめた。

この人にはうんと協力して貰わなきゃならない…。


「そうです、分かっちゃいました…?」

「分かるよ。アイラちゃんが怖がってんの…。どうにかしてあげたいけど…」

「いいえ、藤堂さんにそこまでして貰うなんて…大丈夫です、ここはお店だし、ボーイも店長もいるし…何より私の隣に藤堂さんがいるってことが、心強いんです」


ニッコリ笑うと照れたように微笑み返す藤堂。

この人普通にしてたら悪くないのに、このお店に通うなんて何か意味でもあるのかなぁ…。


「じゃあアイラちゃんの好きなもの頼んで楽しく飲もうか」

「はいっ!!」


ボーイを呼んでまずはピンドンを入れた。

こんなんじゃ全然足りない。

ピンドン100本入れたって勝てない…どうしよう…。

そんな私たちの目に入ったのはサワラの入れたシャンパンタワー。

…サワラにそんな太客いたっけ…?

テーブルに座っている客を見ても知らない人。

知らないけど…――――どこかで見たような顔で…いったいいつどこで見たのかは思い出せない。

でもあの黒いスーツの人どこかで…


「アイラちゃんあのタワーって俺もできたりする?」


聞こえた声に過剰に反応して藤堂を見た。


「今日ほら前川って奴来てるでしょ…。ちょっと見せつけちゃってもいいかな?アイラちゃんは俺のもんだって」

「…い…んです…か?あのタワー…すっごくお金かかってますよ?」

「アイラちゃん約束したじゃん!俺がキミをナンバー1にあげるって。悪いけど金は腐るほど持ってんだよね。それをアイラちゃんに全部あげるって…言ってるんだけど…迷惑かな?」

「いえまさか!!嬉しい!!」

「よし、んじゃ早速頼むね!」


ナオトがいないこのフロア。

藤堂の呼びつけに膝をつけて来たのは店長のケイジ。


「あのタワーよりも高いの、こっちに入れて」

「かしこまりました」


ニヤってケイジが笑った。




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