アキラを愛した代償1 ドキっとした。 ぶっきら棒に乱暴な言葉を飛ばすケイジは、プライベートは少し強引で、なんていうか「俺様」的な印象だったから…。 フワリと微笑んだその顔に、内心ドキっとしたんだ。 「ナオトが私を騙してるってこと?」 「…さぁ?けど女関係でいい噂は聞かねぇし…何よりあいつ女いると思うけど…?」 ケイジの言うことがほんとなのかウソなのかも分からない。 ナオトを信じるのか、ケイジを信じるのか、何も分からない。 でも誰かを疑うことが、こんなにも悲しいことだと知ってしまった私は、どっちの話にも首を振れない。 私にほんとの愛を教えてくれる…そう言ったナオトを信じたいのに、私を本気だと言ったケイジを信じている。 もう、何が何だか分からない。 「ナオトのことはもういい」 「榊原にはもう近づくな」 「どうしてみんな過去を隠すの?何があったの?」 私の言葉に視線をずらしたケイジは、ガラステーブルに無造作に置いてあった煙草を取ると、それに火をつけた。 白い煙が部屋をユラユラと登っていく。 中途半端に聞いてしまっている私は分からない部分が多すぎてもどかしいんだ。 「昔の話聞いてお前はどうしたいの?俺らの過去全部知れば満足?」 鋭く視線を飛ばすケイジに、ちょっとだけ胸が苦しくなった。 そんな風に思っていたわけじゃないのに、そんな言い方されると悲しいじゃん。 何も言えずに黙っている私に、ゆっくりと近づくケイジ。 正面から、真横に移動してきて… 「アキラが好きなのか?」 聞かれた言葉は切ないのに、ケイジが出す声は優しくて…――――小さく頷いたんだ。 「まだレイラと続いてる…俺んとこ来いよ」 肩を抱かれて頭を撫ぜられた。 でも私を愛してるって言ってくれたアキラを疑うなんてできるわけない。 だから左右に首を振る私を、ちょっと強引に抱きしめるケイジ。 「アキラを愛してるの、私…」 「俺は、ユヅキを愛してる…」 「言わないで、もう…。ケイジの気持ちには応えられない私」 「それでも無理なもんは無理なんだ…ごめん…」 悲しそうに微笑んだケイジの唇が私の頬に小さな音を立てて落ちていく。 アキラを愛した代償は大きすぎて…ここに来たことを後悔した。 どうして「愛してる」って気持ちだけじゃ、ダメなんだろうか…。 涙が止まらなかった――――… |