愛してるって言って | ナノ





店長の洞察力1




「………」


えっ、えっ…ええっ!!?

なんで?なんでケイジの家に行くわけ??


「別に無理やりヤらねぇからそんな顔すんなって」


くすって余裕たっぷりケイジに言われて、ちょっとだけ恥ずかしくなった。


「別に何も心配してないもん」

「そうか?」

「そうよ!」

「ムキになってる所が余計怪しいけど…そういうことにしてやるよ」


クシャって、伸びてきたケイジの手が私の髪を撫ぜた。

信号が赤になって車を止めたケイジは、「ああ―」って腕を伸ばして大きく伸びをする。

一瞬…キスされるのかと思ったなんて内緒にしておこう。


携帯は切った。

ナオトには具合が悪いからって自分の家に帰るとだけメールをしておいて…。

アキラは、二号店の方に行きっぱなしで、しばらく帰って来れないって昨日言っていたから。

私はケイジの家でどうなっちゃうんだろう?

ケイジを信じていないわけじゃないけれど…前科があるし…あまり信用するのも…泣きを見るかも…?

私に対して「愛」を誓ったケイジと二人っきりで…

逃げ場なんてどこにもないんだと思った。


ガチャンと、玄関の鍵を閉められた時に、胸がドキンと鳴った。

私の所とあまり変わらないケイジのマンションは想像よりも汚かった。

几帳面そうに見えるのに、意外と男なんだなぁ…なんておかしくなる。


「飲めよ」


ゴポゴポとシャンパンをグラスに注いで持ってきてくれて…。


「いただきます」


一口飲むと甘くて美味しい。

ソファーに誘導されてチョコンと座った私の前、ケイジも座ったんだ。


「ナオトはいいのか?」

「…――――はい?」

「ナオトだよ。俺が気づいてねぇとでも思ったのか?」


吃驚して…ソファーからずり落ちた。

完全に動揺している私を見て笑うケイジ。

どうして…分かったの?


「キャストの恋愛事情なんて一目で分かる。俺が気づいたのはお前じゃなくて、ナオトの方…」

「ケイジ…」

「けどユヅキ…。片岡ナオトをあまり信用しねぇ方がいいぞ。店のキャストもボーイも…信用すんなよあんま…」


…―――「ケイジも?」投げかけた質問に、一瞬目を大きく見開いたものの、すぐにちょっとだけ切なそうな顔で「俺は信じて」…優しく囁くんだ。




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