愛してるって言って | ナノ





5年前1




聞かない方がいいのかもしれない。

だけど、知りたい気持ちがないわけじゃなくて…


「ケイジ、ごめん…この人に私をつけて」

「ダメだ!そんな危険なことできるか!」

「大丈夫だから。きっとこの人は私に何もしないと思う」

「話が分かるなぁアイラ!」


話を遮る榊原を無理やりテーブル席に案内して、私は隣に座った。


「今日はアフター入れない、ケイジと一緒に過ごす、だからお願い!!」


そんな風に自分を売ってしまう私を、アキラはこれからも愛してくれる?

迷いながらもナオトを見張りにつけるかのよう、ケイジが仕方なく私を榊原の席につかせてくれた。

ここの所しばらく姿を見せていなかったテツヤさん、今日もまだ姿を見せてはくれない。

テツヤさんの迷惑にならないようにしなきゃ…


「お前惚れてんだろ、アキラに」

「…それは関係ないでしょ?」

「まぁそうだけど…何が聞きたいわけ?」

「…全部話して。オーナーとレイラさんに何があったのか…」


ゴクリと唾を飲み込む私の肩に腕を回す榊原は、70万円のルイをいれてくれて、それからゆっくりと話だした。


それは今から5年前のこと。

CLUB ISLANDがオープンしてすぐの夏、ナンバー1を張ったレイラはみんなから好かれる素敵な女性だったと。

性格もよくて、人懐っこいからすぐに人気者になって、このISLANDがどんどん大きくなっていって。

そんな中、いつの間にかオーナーのアキラと親密な関係になっていったようだ。

誰も入り込める隙もないくらいにお似合いな二人を、みんなが祝福していて…

でもそれは仮の姿だった。

もっともそれを知っているのはほんの数人だけで、勿論ながらお店のボーイやキャスト達は二人の愛が本物だと信じて疑わなかった。

今もずっと…。


「分かるか…レイラを通してアキラはお前を見ていたんだ…」

「…私?でも私オーナーと逢ったのなんてほんとに最近で…」

「お前はな!あっちはもっとずっと前から知ってたんだよ」

「なんで…」

「なんでってお前…テツヤと…――」

「そこまでだ!俺の女返せよ」


動揺を隠しきれない私を引き上げたのは、久しぶりに見たテツヤさんだった。




- 98 -

prev / next


TOP