愛してるって言って | ナノ





ショック1




藤堂に連れられて来たのはお洒落なバーで。

この前ナオトと来た所とはまた違う大人の雰囲気だった。

カウンターに座ったから、ちょっとホッとしていて…

さっきの前川のことがあったせいか、多少なりとも男の人に対して警戒心を見せているのかもしれない私を、気遣ってくれているなら有難かった。


「気に入ってくれた?」


カウンターに肘をついて私を覗き込むようにそう聞いた。

照明が落ち着いたセピア色で、周りには恋人たちが寄り添っていて…


「何だか密会しているみたいですね」

「はははは、そうかも!」

「あ、もしかして、私以外の女の人を連れてきたことあるでしょ?」

「え…いや…参ったなぁ…でも今は俺、アイラちゃんしか目に入ってないからさ!信じてよ?」

「それは、今後の藤堂さん次第ですね」

「ははは、一枚上手だな、こりゃ」

「当然ですよ!」


思ったよりも距離を縮めてこない藤堂に内心さっきからずっとホッとしている。

さっき私が藤堂に言った前川のことがよかったんだって。

男の人はやっぱり自分を頼って貰うのが嬉しいんだって分かったから、今後の仕事の足しにしようって脳内インプットしたわけで。


「そういやこの前アイラちゃんとこのオーナーさん見たよ」

「え…――オーナーですか?」

「うん、何か二号店出すんでしょ?」

「…ええまぁ…」


思わぬアキラの話題に胸がざわついてしまう。

アキラが私に怒りをぶつけたあの日から、まだそれほどの時が経っているわけじゃないのに、何だかもう、ずっと逢っていないような気分だった。

ナオトといると、一瞬でもアキラを忘れることができるけれど…

テツヤさんと一緒で、やっぱり私の気持ちを今は満たしてくれない。

ナオトが悪いわけじゃなくて、悪いのは私。

ナオトもそれを分かってくれているから…無理強いはしなくて。


「アイラちゃんじゃなかったの?一緒にいたの…」

「え…?」

「アイラちゃんだと思ったから俺ちょっとショックだったっていうか…何か雰囲気よかったからさ!まぁあのオーナーだったら仕方ないかな…って思うけど…」

「藤堂さん!?待って!!」

「えっ?」


私の声に吃驚してお酒を口に運ぶ手を止めた藤堂。

ドキドキしすぎて呼吸がうまくできなくなりそうで…

目頭が熱くなってしまう。

それを気づかれないように、藤堂から少し視線をずらした。




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