愛してるって言って | ナノ





優しい恋人1




「じゃあ行ってきます」


ケイジに報告し終わったからそう言ってお店の裏口に向かった。

タンタンタンタン…聞こえた足音に足を止めた。

来ると思ってたから…


「何かヤキモチ…」


後ろからギュってされて、耳元でそう囁くナオト。

誰もいないのをいいことに、そんなカップルっぽいことを当たり前にしちゃうナオトは、宣言通りに、愛情いっぱい注いでくれている。

このままナオトと一緒にいたら、きっと私はアキラを忘れてナオトを一番に好きになれるんじゃないかって思えるほどに。


「睨んだでしょ、私のこと?」

「違げぇ。俺が睨んだのは店長の方!自分の女睨むわけないでしょ?」

「そっか。ならよかった。ナオトに嫌われたかと思った」

「…わざと言ってる?」


クルリと向きを変えさせられて、ジッと私を真っ直ぐに覗き込むナオト。

さっきケイジも言ってたけど…わざと何をどう言うっていうんだろうか。

それが私にはさっぱり分からないんだけど…


「わざと何をどう言う必要が?」

「ん―…無意識で男心くすぐってるの気づいてないのがまた厄介だな、たく」


そう言って、チュっと軽く唇にキスを落とした。


「ほんとはちゃんとキスしたいけどユヅキのグロス俺に移っちゃうとバレちゃうから今はこれで我慢するけど…アフター終わったらちゃんとキスさせてよ?」


ナオトのこういう所、すごく可愛いって知った。

男っぽかったり、子供っぽかったり、でも優しくて頼れて…


「うん、帰ってきたらいっぱいしていいよ」

「はっ、上からかよ!」

「あはは、ごめんってば。もう行くね?」

「あ―…うん。マジで気をつけて…。何かあったら店長じゃなくて俺に電話してよ?」

「そうする」


私の背中を押して送り出してくれるナオト。

こういうお仕事だから仕方のないことだけれど、やっぱり自分の恋人を他の男とデートに行かせるのって普通に考えて嫌なんだろうなって…。

こっちは仕事って割り切ってるけど…そう簡単な思いじゃないよね。

帰ったら本当にいっぱい抱きしめて貰いたいな…なんて思ったんだ。

裏口から階段を下りてお店の前に行くと…「前川さん?」藤堂よりも手前にいて。


「アイラちゃん…最後にもう一度顔見たくて待ってたんだ」


何ともいえない鳥肌がたった。




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