愛してるって言って | ナノ





女ともだち1




閉店時間を迎えた私は、憂鬱な気分のままで。

これからテツヤさん以外の人とアフターに行くなんて本当に気分が落ちてしまう。

小さくタメ息をついた私に「アイラちゃん」後ろから声をかけられた。

振り返るとサワラがいて…


「さっきの前川さん、気を付けた方がいいと思う」

「…そうみたいですね」

「気づいた?」

「いえ、店長から忠告されました」


苦笑いを返すとクスっと笑われた。

バカにしてるとかそういうんじゃなくて…


「もうアイラちゃんには適わないなぁ…」


そう言ってクスクス笑い続けるサワラ。


「あの、サワラさん?」

「オーナーも店長もテツヤさんもみんなアイラちゃんなのね…」


はいいっ!?!

目を見開いてサワラを見つめる私に「羨ましいって思ってたけど…」そう続く。

更にその続きを聞くのに、どうしてか胸がドキドキした。


「何だかアイラちゃん見てたら、みんなの気持ち分からなくもないかも…って。ほおっておけないみたいだね、みんな」

「そんなこと…ないです」

「そうかな?で、実際誰が本命?」


何だかサワラさんにからかわれている気分になった。

本命と聞かれて浮かんでしまうのはアキラ。

でも今の私はアキラなんて言えないし、それに私はナオトのものだから…。


「誰も本命じゃないですよ。みんな私をからかってるだけです」

「ズルイなぁ、その台詞。あたしも言ってみた―い!ま、いいけど、とりあえず前川にはなるべく同伴もアフターも付き合わないようにね」

「はい、忠告ありがとうございました」


初めてサクラさん以外でまともに話せたキャストだった。

サワラのお陰で藤堂とのアフターに少しだけやる気が出てきて…。


「店長私この後藤堂さんとアフター入りますので」

「あん?藤堂って?」

「今日指名いただいた方ですけど?」

「…あぁ、あの色恋で引いてる奴か…」


何も言ってないのに、私の営業パターンと読み取ってるケイジがすごいと思った。

キョトンと見つめる私に「何かあったら電話しろよ、すぐ行ってやっから」なんてクシャっと頭を撫ぜられた。


「うん、ありがとう」

「そろそろ送りさせろよな?」


それはどういう意味なんだろうか?

送りオオカミって意味かな?

苦笑いを零す私に、ナオトのジロっとした視線が飛んできてた。




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