愛してるって言って | ナノ





胸の奥の証5




「アイラちゃん可愛いからすぐできそうだよね?」

「無理ですよ、私。人を好きになる感情が本当によく分からないんです…。好きなのかな?って思うまでも時間がかかると思いますし…信じて裏切られることを思うと怖くて。擦れた性格ですよね、本当」


頭に浮かぶアキラの姿。

悲しい程に、アキラに恋をしているというのに…この仕事はそれもウソに変えなければいけない。

まさかのキャストがオーナーに熱を上げているなんてバレたら私だけじゃなく、オーナーまで印象が悪くなってしまう。

そんなこと絶対にできない。


「アイラちゃん…」


ドキ…。

何だろう、この感じ。

今の今までちょっと無愛想だった前川の持つ空気が変わった気がした。

同時に感じる私を見る目つき。

それが嫌なものに思えて仕方ない。


「アイラちゃん、今夜アフターどう?」

「え?…アフターですか?」

「うん、そう。僕とアフターいかない?」

「ごめんなさい、今夜はもうお約束が…」

「じゃあ明日!僕また明日もアイラちゃんを指名するから、明日は僕とアフターいこうよ?」

「前川さん、明日から海外出張って言ってませんでした?」


見兼ねたようなサワラの言葉に、ハッとした顔をして落ち込む前川。


「ああ、そうだったね。じゃあ帰ってきたら僕また連絡するから、同伴とアフターしようよ。僕すっかりアイラちゃんが気に入っちゃった」


変。

何か変…すごく変。

だってこの人の目つき…「失礼します、アイラさんよろしいですか?」…声に安心してしまった。

ケイジが私を移動させるようにして奥に連れて行った。


「あいつ、出禁にすっか…クソ」

「え、出禁?」

「そうだよ」


そう言いいながら小さくタメ息をついて私の髪にそっと触れた。

見つめる瞳は優しくてやっぱりケイジの視線は情熱的。


「なんで?」


キョトンと聞く私に「厭らしい、あの目つき」なんて言葉!!

ケイジからそんな言葉が出ると思ってもみなくて、思わず笑ってしまう。

そんな私を軽く睨むケイジがちょっと可愛くて…


「妬いてるの?」


なんて聞いてしまうんだ。




- 83 -

prev / next


TOP