愛してるって言って | ナノ





胸の奥の証4




「こんばんは、ISLANDのアイラです!ご指名ありがとうございます!」

「…ああうん」


うわ、とっつきにくいなぁ…この人。

テツヤさん関係の人はみんなバックにテツヤさんが着いてるからって、何となく私から一歩引いてる感じの人が多いけど、この人はそうじゃなさそうだった。

私が藤堂の所にいる間、ヘルプについていたサワラさん。

今時珍しい派手さを押さえた静かな美人って感じの人。


「今サワラちゃんの友達の恋愛話聞いててさ…」


ちょっとシンミリした空気はそのせい?

私は隣に座って前川のお酒を造った。


「サワラさんの友達の?」

「ええ、まあ…」


そう言ってちょっとだけ眉毛を下げたサワラ。

それはたぶん友達じゃなくて、サワラ自身の話だよね…?

聞いていいのか微妙な所だったけど「前川さんに相談したら何でも解決してくれそうですね」なんて言ったら、機嫌をよくしたのか、サワラの意見も聞かずに話し出した。

ずっと好きだった人には恋人がいて、それでも諦められない…そんな内容だった。


自分と重ねるわけじゃないけど、アキラに恋人がいたら私も苦しいんだろうなって思った。

現に、レイラさんの存在を知ったことで、アキラの過去を埋めていた彼女に少なからず嫉妬心が芽生えたのは間違いじゃない。

でも、それを嫉妬と呼んでいいのかも分からないくらい曖昧なもののような気がするけど…。


「結婚してなきゃその人のもんじゃない!諦められないなら気持ちをぶつけた方がいいよ」


そんな前川の言葉にサワラも少しだけ微笑んでいる。

その顔がすごく切なくて、本当に好きなんだろうな…って思った。


「アイラちゃんは恋人いないの?」


突然フラれて、ドキっとした。

ちょうど私達のいるテーブルの横をドンペリを持って通り過ぎたナオトがチラっと私を見て微笑んだ。


「…いませんよ、私…。初恋もまだです、じつは…」

「えっ?」


声をあげたサワラは本気で吃驚した顔だった。

困ったように苦笑いをする私に、「珍しいね〜」なんて笑う前川…。




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