胸の奥の証2 「うん、分かった。ありがとう、何かあったら健ちゃんにちゃんといっ…―― 「何かあってからじゃ遅いだろっ!!!俺アイラちゃんに何かあるなんて、考えたくないよっ!!」 次の瞬間、ギュウって吃驚するくらい強く健ちゃんが私を抱きしめた… ドキドキ心臓が高鳴っていく。 でも、私を抱きしめている健ちゃんのその腕も身体も震えていて… だから突き放すことなんてできなくて。 「健ちゃん…」 「頼むから一人で抱えたりしないで?」 目を真っ赤にしてそんな言葉。 私のせいで…私の為に泣いてくれてるの…? グズン…って私にしがみつくみたいな健ちゃんの背中に腕を回してギュっと抱きしめ返した。 トン…トン…ってお母さんが子供をあやすみたいに緩くリズムを刻むと、しばらくして健ちゃんが「ごめん…」そう言って顔を上げた。 涙を手で拭って私に背中を向ける健ちゃんを、今度は後ろから私が抱きしめた。 「ありがとう…嬉しかった。私なんかの為に泣いてくれて…」 「当たり前だろ。誰だって…―――」 言葉に詰まった健ちゃんはクルリと振り返って、一瞬真剣な瞳で私を強く見つめた。 でもすぐにいつもの健ちゃんの顔に戻って… 「ほんとに何でもいいから僕に言ってね?」 「…う、ん…」 しっかり頷く私を見て、「ちょっとトイレ」そう言って出て行ってしまった。 「…はぁ―――…」 壁に寄りかかって考えてみるけど… …昨日の今日だから、リンとかスズが? でもそんな低レベルなことしなさそうだし…。 はぁ…困ったな。 やりずらい。 それから戻ってきた健ちゃんにヘアメイクをして貰っている最中、私の携帯にお客さんからのメールが届いた。 アフターの誘いだった。 今後はテツヤさん以外の人ともアフターとか同伴とかしていかなきゃと思うと、少し憂鬱な気分になる。 いかにテツヤさんに対して甘えていたかを思い知らされるわけで…。 携帯でメールの返信をしながら小さくタメ息をついた。 |