愛してるって言って | ナノ





胸の奥の証1




「キャッ!!」


吃驚して思わずロッカーを閉めた。


「アイラちゃん、どうかした?」


ヘアメイクの健ちゃん。

私の声にこちらを振り返って、ちょっと心配そうな声を出した。

目の前の出来事に吃驚して動揺を隠せない私に、後ろから来た健ちゃんが一度閉めた私のロッカーを開けた。

瞳に映る引き裂かれたドレス。

そこにどんな意味があるのか…。


「なんだよこれ…」


いつも優しい健ちゃんの声のトーンがあきらかに低くなっている。

そっち系の健ちゃんが初めて見せる、オトコの顔…。


「言わないで、誰にも。私大丈夫だから…」

「けど…」

「本当に平気!」

「…でも…」

「揉めたくないの、キャストと…」


そう、私にはそんなことをしている暇なんてさらさらない。

犯人捜しをするなら、指名とらなきゃ。

テツヤさんと一緒にナンバー1を取らなきゃ、アキラに認めさせなきゃ…

そう意気込んだけど、ふと思い出すのは昨夜のナオト。

アキラやテツヤさん以外の人に抱きしめられて眠るなんて初めてで…。


「アイラちゃん…」


健ちゃんの声にハッとしてニッコリ笑う。

そっとドレスを隠して私は今日のドレスに着替えた。


「本当に大丈夫だから、そんな心配そうな顔しないでほしいな」


私から離れようとしない健ちゃんに向かってそう言ってみるけど、煮え切らない顔をしたままで。


「俺、ずっとここにいるから色んなこと見てきた。…そういうの最近はなかったけど前に一度だけ酷いのあって…」


思い出しているのか、眉間にシワを寄せて言葉を続ける。


「精神的に追い詰められて…ほんとに酷かった。もう二度とそういうの見たくないってあの時思って…俺でできることあったら何でもする…だから隠さず何でも話して?」


私の肩を両手で押さえてジッと真っ直ぐに見つめられてそう言われた。

肩に込められた力に、健ちゃんはやっぱり男なんだと思わずにはいられなかった。




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