愛してるって言って | ナノ





甘い言葉4




「テツヤさんの枕止めて…俺だけにして」

「ナオト…」


心が揺れる。

恋人ができても、お客と寝るなんて酷い話。

私の場合はテツヤさんに何もされていないけれど、表向きは抱かれたことになっているわけで。

アキラすらそのことを知ってしまった。

本当は抱かれていないけど、抱かれていることになっている私…。

どう答えればいい?


「………」


何も言えずに俯くだけの私に、ナオトの手がちょっとだけ強引に私の小指に力を込めた。

少し潤んだその瞳に、胸が熱くなった。


「…ナオト私…」

「すぐじゃなくてもいい。ゆっくりでもいいから、最後は俺だけにして?」

「…うん」

「じゃ、行こう。今すぐ独り占めしたい…」


私の手を引いてクラブから出て行くナオト。

何も言ってくれないアキラ。

私を誰かと重ねているかもしれないケイジ。

愛されているのに、満たされないテツヤさんの想い。

真正面から私を愛してくれるナオト。

恋愛経験の少ない私は、どの手を取ればいいのかも分からず、差し出された一番近いその手を掴んだことが、大きな間違いだったなんて…―――――










翌日。

出勤した私がロッカーを開けた瞬間、飛び込んできたそのドレス。

昨日着ていたドレスが、ズタズタに引き裂かれていたんだ。

まるでそれが、崩れていく何かを表しているかのよう…


はたまた、これからが何かの始まりかのように…――――――




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