苦しいほどに5 「好きになる人、間違えました私…」 それは完全にテツヤさんに対しての言葉。 テツヤさんが私にくれる愛情は、どこか儚げなもので、アキラやケイジがくれる情熱的なものとは違う気がして。 言葉で「愛してる」と言ってくれることも、その態度で私を「愛して」くれているのも分かっていたし、十分感じているけれど、その一線だけは絶対に超えないテツヤさん。 テツヤさんの枕やると決めたことも、私なりの覚悟の上だったのに、結局今もテツヤさんは私を抱いてはくれなくて…。 そんなテツヤ「さんに対する嫌味の言葉。 テツヤさんが私を女として扱ってくれていたのなら、テツヤさんだけを愛していたかもしれないのに…って。 「言ったろ、お前の相手は俺じゃねぇ…って。俺がどんなにお前に愛情込めて触れても、お前の心までは掴めねぇよ。例えケイジにはできても、俺にはできねぇんだ…」 テツヤさんが何を抱えているのかも分からないから、テツヤさんの言った意味も分からない。 「もうどうしたらいいのか分からないです…」 「…アイラさん、閉店です」 ナオトくんが私にそう言って、テツヤさんの腕の中から出てきた。 「…今日は帰るから、ゆっくり休め…」 クシャって私の頭を撫でてくれるテツヤさん。 お見送りに立つ私を「いいから」そう言ってお連れの人と共に、フロアを出て行った。 「大丈夫?」 ナオトくんの揺るい声が私の耳に優しく届いて…「大丈夫だよ」そう笑う私の笑顔もきっと不自然。 「全然大丈夫じゃないじゃん、もう…。今日アフターないの?」 「ないよ」 「じゃあ俺すぐ終わらせるから待ってて。いい店連れてってあげるよ、ほんとに。今夜は俺とアフターにしよ」 気を使ってくれてるのすごい分かる。 そういう気分じゃないんだけれど…―――――「うん、分かった」一人でいたくなくて、ナオトくんに甘えてしまった。 |