愛してるって言って | ナノ





苦しいほどに4




「疲れたか?」


そう言って私を休ませてくれる優しいテツヤさん。

今日もちゃんとプラチナを入れてくれてる。

私のせいで、お店に入れなかっただろうリンやスズの客も、もう閉店間際の時間には残っていなく、二人からの鋭い視線を浴びているのに気付かないフリをしているのもだいぶ疲れた。


「…少し」


思わず漏れた本音に「ハハハ」ってテツヤさんが笑った。


「今日もアフター行くか?」


テツヤさんがそう問いかけてくれたのは、私を心配してだって分かっている。

勿論私だってそうするべきだって…。


でも…―――――


アキラとの約束を破った私、その罪悪感なのか何なのかが胸の中をギュっと締め付けていてさっきからずっと痛い。

こんな気持ちになるなら、アキラを好きになんかなりたくなかったよ。

前にサクラさんが言った「オーナーはやめときなさい」って言葉が頭を過ぎって何ともいえない切ない気持ちになる。


「テツヤさん、私胸が痛いです…」


泣くつもりなんてなくて…

でも口に出したその声は完全に震えていた。

もうきっとあの家にはアキラは帰ってきてくれない…そう思った。

あんなに取り乱すみたいなアキラは初めてで…

だったらどうして一言「愛してる」って言ってくれないんだろうか?

アキラがそう言ってくれたのなら、何もかも捨てて着いていくのに…きっと。


「アキラを好きすぎて、苦しいです。…人を愛することは、こんなにも苦しいことなんですか?…みんなこんな想い抱えているんですか?」


泣き出す私を宥めるようにテツヤさんの手が私の肩に回されて、視界を遮ってくれる。

私のこと、その身体全部で守るって言ってくれてるみたいで、すごく安心できる温もり。




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