苦しいほどに3 「ああ、そうだ」 でもそんな茶番劇はこのテツヤさんの一言で終わりを告げる。 誓ってテツヤさんには抱かれていないというのに、わざとなのかそうアキラに告げたテツヤさん。 その瞬間、アキラの目が死んだように色を変えた…気がした。 ガンッ!! 近くにあったキャスト待機場所であるソファーを思いっきり蹴り飛ばすアキラ。 その音にビクっとして… 視線を向けたアキラはほんの一瞬だけ私を見ると、そのままもう何も言わずにISLANDを出て行った。 何が起こったの? 「テツヤさん…」 「気にすんな」 クシャって私の髪を撫でるけれど、気にならないわけがなくて… 「どうして嘘なんて…」 「お前を誰にも渡さない為、ただそれだけだ」 何も言い返せなった。 あまりにもテツヤさんが言葉とは裏腹に泣きそうな顔をしたから…。 きっと私はアキラを愛しているけれど、いつだって私の傍にいてくれるテツヤさんの気持ちに応えないなんてこと…―――――できやしないよ。 それがアキラを傷つけることになったとしても…私はテツヤさんを裏切ることはできない。 「今は何も考えずに仕事に集中しろ、いいな」 「…はい」 私の返事を聞いただろうケイジが私を迎えにくるように隣に立った。 「じゃ、アイラさんご案内しますね」 「お願いします」 あえてナオトくんに頼まないで、自ら私を新規卓に連れていく店長のケイジ。 その大きな後ろ姿は無言だったけど「大丈夫、俺が守る」そんな風に言ってくれている気すらした。 「失礼します、アイラさんです」 ひざまづいて私を通すケイジの後ろからペコっと頭を下げてお客さんに向かって笑顔を見せた。 「こんばんは、ISLANDのアイラです!ご指名ありがとうございます!」 「こんばんは」 そう言って私を招き入れたのは、昨日テツヤさんと一緒に居た時に名刺を配ったIT企業の社長さんで、一目で私を気に入ってくれたとのこと。 隣に座って話を聞くと色んな世間話が飛び出てくる。 正直ITのことなんて言われた所で何一つ分からないけれど、ニコニコ笑って聞いてたら気分がよかったらしくどんどんお酒を頼んでくれた。 さすがは社長。 この人太客決定だなぁ! そうやって新規指名8組を慌ただしくこなした私は、閉店間近にやっとテツヤさんの指名を受け取った。 |