愛してるって言って | ナノ





苦しいほどに2




「…オーナー…」


出した声が不覚にも震えていて、私をジッと見つめるその瞳は明らかに怒っている。

あまり感情を露わにしない人なのに、物凄い鋭い目を私に向けていて…


「離してください!」


そう言うのが精いっぱいだった。


「てめぇ、オレとの約束はどうした?」


…やっぱり怒ってる。

目も口調も、表情も、腕を掴むその力も加減なしで…

バンッ!と、私を壁に押し当てて肩にグッと手を添えられた。

顎に指が触れて俯き加減の顔を上に向けさせられる…。

そんなに怒ること?


「…オーナー今仕事中です!その話は終わってからにして下さい!」


キッと睨んで負けずとそう言った。

でも、そんな私を更に睨み返すアキラ。


「どういうことだよ、この客!テツヤの枕したの!?」

「は?何言ってんですか?」

「その身体、テツヤにあげたのかって、聞いてる!?」

「そんなことしてません!!」

「じゃあなんだよ、あいつら!」


全くもって、アキラの言ってる意味が理解できなくて。

ケイジにしても、アキラにしても、この客がどうしてテツヤさんに繋がっているんだって思うわけ?


「ユヅキをナンバー1にするのはこの俺だ、アキラ。お前は黙って二号店行ってろよ!」


壁からやっとテツヤさんに助けられた私。

どうにも息が上がるぐらい緊迫した空気で、大きく深呼吸を繰り返した。


「いい加減にしろよ、テツヤ!こいつを抱いたのかよっ?」


まだそれにこだわっているアキラ。

こうやってカレが取り乱すことなんて今まで一度もなくって…

もし私が本当にテツヤさんに抱かれていたら、一体どうなってしまうんだろうか?

そう思うとちょっとだけ鳥肌がたった。

愛情の重さなんて恋愛初心者の私に分かるわけもないのに、今のアキラを図ったのなら私の想いよりも、重いのかもしれない。

そんなバカげたことを思ってしまうんだ。




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