愛してるって言って | ナノ





瞳を閉じて2




「じゃあ…」


そう言って私はそっとテツヤさんの頬に口づけた。

手を胸ら辺に当てているせいで、テツヤさんのドキドキが私に伝わってくるのが分かる。

テツヤさんはどういう「好き」なんだろう?


「ユヅキ…もういいから」


ギュって抱きしめられて、テツヤさんは私の頭を抱えるみたいに顔を隠した。


「テツヤさん」

「うん?」

「私って魅力ないですか?」

「…や、そんななことはないけど…」

「けど?」

「忘れたいのか? アキラのこと…」


そんな質問をされて黙り込んだ。

忘れたいといえば、忘れたい。

でも、あんな風に胸がギュっとするのは…―――アキラとしか無理。

抱きしめられて幸せな気分になれるのは、アキラが一番。

キスされて嬉しいと思ったのは、やっぱりアキラで。


「ユヅキ…」


泣いてしまった私の涙を、指で優しく拭ってくれる。

テツヤさんの前だと甘えが出てしまって、もしかしたらそんなんだからテツヤさんは私に何もしてくれないんだろうか?

結局、自分が頑張ってないから魅力半減しちゃうんだろうか。


もう、何が何だかよく分からない。

分からないのに…

こんなにも胸が痛いのに…


アキラに逢いたいんだ。


「もう寝ろ。ずっとこうしててやるから」


涙の痕にそっと唇を落とすテツヤさん。

この人を愛せたら、どれだけ幸せなんだろうか…


――――――――


そして翌日、私はテツヤさんの好きな真っ赤なドレスを着て、テツヤさんの取り仕切る総会に出席した。

ただ黙って隣に座っているだけ。

それでも、昨夜テツヤさんが言ったみたいにセレブな人達が見事に名刺をくれた。


休日の私は勿論ながらISLANDに顔を出すこともなく、アキラの待つ…あのマンションに帰ることもなく、テツヤさんの家で過ごした。

そうして翌日出勤した私は、目の前に広がった光景を見て度胆を抜かれたんだ。




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