愛してるって言って | ナノ





愛情2




「ユヅキ、気にすんなってあのヤクザは」


…アキラまでもがそんな言葉を繋いで。

気にすんな!って言われても気にするよ。

背中を向けているアキラは見えないかもしれないけれど、さっきからずっとテツヤさん私から目逸らしてくれない。

あの、目つき半端ないし…。


「アキラ…。あのフリーのお客、何か問題あるの?」


あえて質問に質問で、更には話題を変えた私に対して、チッて舌を鳴らされた。


「何で私ここに連れてこられた? みんなが焦ってるように見える。アキラはどうしてここに来たの? 誰かに呼ばれたの? あの客のせいで?」


よほどの緊急事態と判断したのか、ここにはテツヤさんと三人だからといって、無意識でアキラをオーナーと呼ばなかった私に、カレは何も言ってこない。

むしろ、そんなこと今はどうだっていい…そんな風にさえ思えた。


「ユヅキ、オレのことだけ信じてろ。お前のことは全部オレが守ってやるから」


結局、答えをくれないのはアキラも一緒で。

私の頬を優しく撫でると、「今日はアフター入れんな」そう言って私を離した。

スタッフルームのドアを開けて出て行くアキラの後ろ姿を見つめている私の鼓動はやけに早い。


「アフター駄目んなっちゃった、テツヤさん」

「仕方ねぇな」


お約束のように私を抱き寄せるテツヤさん。

聞きたいことが沢山ありすぎて、何から聞けばいいのか分からない。

テツヤさんの温もりはいつだってポカポカで大きな愛で包まれているような気分になれる。

全てにおいて”情”の知らない私が唯一安心できるものだった。

もしも、こうして母に抱きしめられて育ったのなら、真っ直ぐにアキラを愛せたのかもしれない。

この、歪んだ愛情…直してくれるのは、他の誰でもない…―――

―――…テツヤさんなのかもしれない。


「テツヤさん…」

「うん?」

「どうして私に何もしないの?」

「………」


あの日、テツヤさん専属で枕になると決めた私。

それを呑んでくれたテツヤさんは、私をナンバー1にする為に、毎日お店で大金をはたいてくれる。


けれど、私に対して枕行為をすることはなかった。




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