愛してるって言って | ナノ





愛情1




バタン!と音を立ててアキラが裏口から入ってきた。

二号店の準備でめちゃくちゃ忙しいはずのアキラ。

基本的にリンの送り以外はこの店に顔を出すことのないアキラ。

それが、肩で大きく息をしてスタッフルームに入ってきた。

ケイジの腕の中にいる私を見て、超強引に引き剥がされる。


「ケイジ、店に戻れ!」


そう怒鳴りつけて。

そんなアキラに向かって、静かに私を離すケイジ。

そして…―――


「アキラ、俺本気だから」


アキラに向けられたその言葉に、でも視線は私をジッと見つめて言った。

ケイジがパタンとドアを閉めていなくなると、ハァー…っと息を漏らすアキラ。

何だかアキラらしくないその行動に私はカレの言葉を待った。


「クソ、あの野郎…」


そんな舌打ちと苦笑いに、私は「新店はどうしたの?」そう聞いた。


「や、あっちよりもお前のが大事」

「え…」


なによ、それ…。

そういうの不意打ちで言わないでほしい。


「私以外にも言ってるくせに…」


照れ隠しでそうはぐらかすだけでいっぱいいっぱいの私に、どうしてかジロリと睨みをきかすアキラ。

何で睨まれる必要が?

睨み返そうとした私に、ふわっとその温もりが落ちてくる…―――


「お前、新店こいよ! ここにいたらオレが心配…」


初めてってくらい、弱気な発言をした。

”心配”の意味も、分からず…

さっきから理由なき?ハグを繰り返されている私は、心臓がドキドキして気持ちがユラユラしてしまう。


「ア…キラ…どうしたの?」

「あっちがOPENしたらオレ、しばらくあっちに行きっぱなしだよ。今でも十分あっちにかかりっきりなのに…お前オレが傍にいなくても平気なの?」


…――――はい?


なにこの遠距離直前カップルみたいな歯の浮く台詞…。

しかもその質問の答えなんて…


―――答えずらいじゃん!!


だから。


「テツヤさん、笑ってないで助けてください!」

「や、映画より面白れぇもん見てんなーって」


放棄された私。




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