恋の始まり4 数秒後、心底イヤそうな顔をしたリンが、それでも私のテーブルに連れてこられた。 ナオトくんがリンに何をどう言ったのかは分からないけれど、リンが自分の利益にならない接客につくとも思えなくて…。 「失礼します、ISLANDナンバー1のリンさんです」 黒服ナオトくんの言葉と共にリンが営業スマイルを飛ばした。 でも、お客に分からないように、ほんの一瞬物凄いリンの視線が私に飛んできて…。 …怖いんですけど。 私はというと… まるで抱えられるかのようにお腹に腕を回されて、ケイジにフロアから連れだされていた。 いつもはテーブルにいるテツヤさんは、今に限ってお店の奥で私を迎えるなんて。 スタッフルームのドアを開けて、勢いよくその中に連れ込まれる。 「どうしたの、ケイジ? テツヤさんまでその恰好、何かあったんですか?」 キョトンと言葉を返す私に、テツヤさんの前だというのに正面から私をギュっと抱きしめるケイジジ。 ふわりと、アキラともテツヤさんとも違う香水が鼻を掠めて、ドキリと胸が鳴った。 「ちょ…ケイジッ!?」 焦る私は、ケイジ越しにテツヤさんと目が合っていて、そんな私とケイジを見てなのか、小さく息を吐き出した。 「ケイジ…重ねてんのは、お前もアキラも一緒じゃねぇか…?」 口に出した声はとても小さかったのに、その声は私の耳に入って離れない。 テツヤさんの言葉の意味が分からないのに、どうしてか胸が痛かった。 …―――これが、恋の始まりなのかもしれない。 悲しい恋への、カウントダウン。 |