愛してるって言って | ナノ





恋の始まり2




「こんばんは、ISLANDのアイラです!」


フリー客二人に対して一人で乗り込んでいく私は気合い十分。

これでも一応サクラさんの教え通りに頑張っている。


「アンタがナンバー1?」


座った途端聞かれた台詞にギロリと睨みたくなる衝動を抑えてニッコリと微笑んだ。


「いいえ、違います。私まだ新人なんです…。リンさんが来るまで私と遊んで貰えませんか?」


あくまで下手に出て様子を伺う私に、困ったような顔を浮かべるフリー二人。


「ゲー…ナンバー1つけとけって言われてんだけど…どーする?」


どうやらまだここにはいない後から来る人がボスらしく、とにかく気を引きたくて…


「お名前教えて貰えませんか、社長さん!?」

「は?」

「だってすっごく貫禄があるので、上に立つ人ですよね? 私間違っています?」


口から出まかせの言葉に、少し表情を緩めたのを見逃さなかった。


「あーまぁ…な。お前中々見る目あんじゃねぇ!? 俺タツヤ」

「タツヤさん! 私タツヤって名前…すっごく好きなんです! すごくよく似合っていますね」

「はは、とりあえず何か飲もうぜ! お前何飲みてぇの? 好きなもん頼めよ!」


嬉しそうな顔でそう言うタツヤは、上機嫌で私に少し近寄ってきた。


「わー嬉しい! じゃあシャンパン飲みたいです! ピンクが美味しいのでいいですか!?」

「おう!」


黒服のナオトくんにピンドンを頼むとすぐに持ってきてくれて、それを飲んだ。


「美味しいです」

「まぁな」

「それで、タツヤさんは、何の社長さんですかぁ?」

「やーまぁ、そういうんじゃねぇんだけど…」


どうしてか恥ずかしそうに頭をかくタツヤ。

さっきからタツヤばっかり喋っていて、もう一人の男は私に全く興味がなさげにしている。

どうにかこの男も気を引きたいんだけど…

そう思いながらも、とりあえずタツヤに「けど?」首を傾げて下から見つめ上げた。

次の瞬間、「お前名前は?」反対側、無愛想な男がボソっと呟いた。

その目は鋭くて…何てゆうか、獲物を捕らえたチーターの様。


「アイラです」


そう言ったら、男の腕が、私の肩に回された。

耳元で囁くように…―――


「へぇ〜、それ誰がつけたんだ?」


威圧的だった。

声も、オーラも何もかも。




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