愛してるって言って | ナノ





平行線4




黙りこくっている私に何かを話しかけてくれるケイジ。

でもその声が遠く感じて…申し訳ないけど、ケイジの言葉が私の頭に全く入ってこない。

だからだと思う、信号で止まった瞬間、またケイジの顔が私に近づく…―――

昨日みたいに、私の唇にキスを落とすケイジ。

さすがに吃驚した私は、慌ててケイジの肩を押して顔を離す。


「おお、やっと気づいたわお前」

「…キスしないでよ、いちいち」

「仕方ねぇ、したくなったんだよ」

「…男ってみんなそうなの?」

「お前の言うみんなって、どのみんなだよ?」


鋭いケイジの突っ込みに思わず視線を逸らす。

だって、ケイジに言われた通り、私の言う“男”はアキラだけ。

リンと帰るその後ろ姿、スッとリンの背中に腕を回したアキラ。

キャストを誘導するボーイみたいに…。

自分がそうされることに何とも思わないのに、アキラが私以外の人にそうすることを嫌だと思ってしまう。

でも、自然にそうしていた気がして…


いつもアキラはリンにそうしているってこと?

やっぱり二人はそういう関係?


考え出したらキリがなくて。

出口のない迷路に入り込んでしまったように、私の脳内はずっとそればっかりがぐるぐると回ってしまう。

どうしたらいいのか分からないくらいに。


「アキラはやめとけ」


ボソっと低いケイジの声。

何度か聞いたことのある、その台詞。

言ったのは、テツヤさんであり、アキラ本人であり…


「もしも、お前がアキラに本気なら…俺も本気でお前取りにいく」


今日はよく赤信号に捕まる。

真剣なケイジの言葉に、向けた視線が逸らせない。


「ダメですよ、風紀ですから、私とケイジはそういうの一切無しでしょ」

「…お前とアキラもな」


絡み合うことのない想いが切なく交差する交差点で、私はケイジと見つめ合ったまま、胸の奥が熱くなっていくのを感じていた。




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