愛してるって言って | ナノ





平行線3




テツヤさんのお陰で、今日の売り上げナンバー1を取ることができた私。

キャッシャーさんが「すごいですね、アイラさん!」そうクシャっと笑ってくれた。

今日はテツヤさんは用事があるみたいで、アフター無しだった為、帰り支度もゆっくり。

カランと裏口のドアが開いて入ってきたのは、オーナーのアキラ。

みんなが「お疲れ様です」って頭を下げる。

私も同じように頭を下げた。


「よお」


そう言って私に近づくアキラは、少し疲れたような顔だった。

新店の準備がそうとう忙しいのかもしれない。

でも、そういう疲れを出さないのがアキラで…


「身体、大丈夫? ちゃんと食べてる?」

「まぁまぁねぇ!」


そう言いながらアキラがキャッシャーさんから売上報告書を受け取る。

一通り目を通してから、ジロっと私を見つめた。

ドキっとして、思わずアキラから目を逸らす私。

…テツヤさんの枕がバレるはずはない。


「お前その香り…」

「えっ?」

「オーナーお疲れ様」

「あぁ…」


私に伸びてきた腕は、空中で止まって、カレの足元に戻っていった。

スタッフルームから着替えを終えたリンが出てきた。

私を見向きもしないでアキラの腕に絡みつく。

…なに、なんで、腕組むの?

今までそんなことしてなかったよね?


「リンお腹空いちゃったぁ。又あの店連れてって欲しいなぁ…」


話しかけている相手はアキラなのに、私の顔をしつように見てそう言うリンの顔は、勝ち誇ったようで…


「早く行きましょう」

「あぁ、お疲れ」


私を見ないで、アキラがスタッフにそう告げた。

どんなに忙しくても、ナンバー1の送りは自分がやるんだって。

わざわざその為にこの店に戻ってくるんだって、何だか胸の奥がモヤモヤしていた。

さっき、アキラは私に何を言おうとしたの?

それも分からないまま、私は今日もケイジの送り。




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