愛してるって言って | ナノ





平行線2




「健ちゃんには言うけど…」

「ん?」

「私ね、ここのスタッフさんが好きなの。だから、絶対にこの店に残ってみせるから!」

「…アイラちゃん…」

「うん、だからこれからも宜しくお願いします」

「うん!僕もアイラちゃんなら出来るって信じてる、ガンバレ!」


何だか他の誰に応援されるよりも、頑張れる気がした。

常に誰の味方でもあり、でも誰の味方にもなれない中立な立場にいる健ちゃんだから、こうして背中を押してくれたことを嬉しく思う。


「ユヅキ!テツヤ待ってる、いけるか?」


店長のケイジの声がして「はーい」私は香水をふりまくと、ユヅキからISLANDのアイラに気持ちを切り替える。

ドアを開けた瞬間、目の前にケイジが立っていて、私の顔を見るなりニヤって笑った。


「いくぞ」

「うん」


私の腰を軽く押すようにフロアに連れて行くケイジ。

テツヤさんの待つテーブルの前、腰を下ろして膝をつく。


「失礼します、アイラさんです」

「こんばんは、ISLANDのアイラです!」

「はは、座れよ」


テツヤさんは私が座るなりその腕を肩に回した。


「お前、あれに参戦するの?」


クって肩を揺らして笑うテツヤさんの視線はリンの働きっぷり。

まだ1時間とたっていないこのフロアの客の9割をしめているリンは、色んなテーブルをいったりきたり…。

それを横目に私はテツヤさんに苦笑いを返す。


「一応そのつもり…」

「なんだその弱気な態度!俺がバックについてるのにそんな顔すんなよ、たく!」


そう言うとテツヤさんはスッと手を上げる。

気づいた黒服のナオトくんが「お待たせ致しました、お伺いします」そう膝まづいた。


「ルイ入れて」


サラリとそう言うテツヤさん。

1本70万円するウイスキーボトルのキープ…。

高級だから、あまり出ることのないルイ。

ナオトくんはニコリと微笑むと大声でオーダーを繰り返した。

その瞬間、別テーブルにいたリンの視線が飛んでくる。

指名客の数は多いけれど、ルイを入れてくれるVIPは今日はいないらしい。

チッて、遠くで舌打ちをしたそうなそんな顔だった。




- 54 -

prev / next


TOP