Secret1
一目惚れっていう訳じゃない。
でもあの日、あなたを見た瞬間からそう、ずっと私の中にいるんだ。
「いらっしゃいませー!」
カフェでバイトの最中、その出逢いは突然やってきた。
美大に通う私は秋のコンクールに向けて正直煮詰まっていた。
何を書いてもうまく書けなくて、どーしようか悩む日々をおくっていて。
バイトをしながらもモデルにする描写を常常探していたんだ。
「やっほー哲也!」
そう言ってレジにいる私を通り越して奥で飲み物を作っている同じバイトでもあり、私の恋人哲也に向かってそんな呼びかけが聞こえる。
哲也の友達かって思わず視線を移した。
振り返った哲也は、「おお!」って微笑んで奥の席を指指す。
そこに荷物を置いて座ると、哲也が私の背中をポンってしてカウンターから出て行った。
私の前にはちょうどお客さんがきて、慌てて接客を続けながらも、哲也の友達を見るのは初めてで、チラチラと視線を向けてしまう。
「ゆきみ、大学の同期あいつら。後で紹介するよ」
戻ってきた哲也がそう言う。
「あ、いつも話してる人達?」
「そーそー。ゆきみに会いたがってるよ、特に直人!」
「直人?よく聞くよね、どの人?」
しょっちゅう哲也の口から出てくる直人って名前は会ったことのない私でも知ってて。
哲也は私をカウンターから客席が見える場所まで移動させると、奥の席にたむろっている若者達の中にいる直人を私に説明してくれた。
「ソファーの手前に座ってるの。デニムにGジャン着てる奴、あれが直人!」
言われた通りデニムのGジャンがいて、私達に気づいたのか、視線が飛んできた。
バチッと目が合うと、口端を緩めてニッコリ微笑んだんだ。
軽く手を振るその姿に胸がドクンと高鳴った。
「何か思ってたのと違う…。もっと男男してるのかと思ってた。ちょっと印象違うかも…」
「それが直人の武器だからねぇ!あー見えて中身が男らしいからすっげーモテルよ。ただ直人は気に入った女の子にしか話しかけたりしないけどね!」
自信過剰?
でも何だろう、爽やかに笑う姿が脳に焼き付いて離れない。
ちょっと書きたいかも、あの笑顔―――――。
そう、思えたんだ。