Vacation1
「南の島でMV!?」
「そ。ゆきみも一緒に行くって話つけてある!」
突拍子のないその言葉に私は吃驚しつつも頬が緩む。
仕事から帰ってくるなりリビングでご飯の準備をしていた私を後ろからギュッと抱きしめて耳元でそう言う直人。
「それは嬉しいけど、ほんとにいいのかな?」
「せっかくだし、旅行気分味わえるようにって。ゆきみの旅費も会社から出るから、新婚旅行の予行練習がてら楽しもうよ!」
新婚旅行なんて先の先の先のことなんだろうけど、こうして少しでも私を幸せにしてくれようとする直人の気持ちが嬉しい。
EXILE TRIBE のMVで、一人づつ好きな場所で好きに撮っていいって言われたみたいで。
直人は私と南の島を選んでくれた。
だから少し早めの夏休みを会社に申請して、私達は遥か南の島へと旅立ったんだ。
「青い海、白い砂浜…直人これやばい!海綺麗…南国っ!」
飛行機を降りて車で島に向かった。
コテージに荷物を置いてすぐに海に出た。
「遠く行くなよ、ゆきみ!」
「直人早く早く!」
「俺よりテンション高いなぁ!」
サングラスなんかかけてかっこつけてる直人を見て私は手首をクイクイ曲げて呼び寄せた。
がに股で歩いてくるその腕を掴んでギュッとすると「みんな見てるよーゆきみちゃんたら!」サングラスをずらすとニヤッと笑う。
「スタッフさんみんな私いること知ってるもん!だってこんな所、直人と一緒じゃないと来れないもんっ!ね、撮影何時から?」
「アハハハっ焦んなって!撮影13時からだからとりあえず準備しよ?」
「うんっ!直人ありがとう!」
「楽しもうな!」
クシャっと直人の手が私の髪を優しく撫でた。
私の顔が見えないように、恋人同士の南の島のバカンスをMVに選んだ直人。
私ができるか?不安よりもこの環境の変化に興奮しかなかったんだ。