Jealousy1
春。
出会いの春。
運動部の俺らが新歓の舞台でダンスパフォーマンスをやったことで、新入生の女子に話しかけられることが増えた。
それなりに楽しい高校生活…そろそろ彼女が欲しいって思っていた矢先だったんだ。
「直人先輩、今度カラオケ行きませんか?」
部活終わり、名前も知らない一年に声をかけられてニヤっと口端を緩めた。
「いいねカラオケ!土曜日遊ぶ?」
「いんですか?」
「もちろん!あ、LINE教えてよ?」
「はいっ!」
よく見ると結構可愛いじゃん!
やっべぇ俺、この子と…
思わず緩む頬。
「彼氏いんの?」
「いないですっ!…直人先輩は、彼女いるんですか?」
「俺?いな…」
ギクリと背中に視線を感じた。
恐る恐る振り返るとマネージャーのゆきみ。
腕を組んで思いっきり俺を睨んでるその姿にゴクリと唾を飲み込んだ。
一年の時からずっと俺達部員を支えてくれてるマネージャーのゆきみ。
一人で俺達全員を見てくれているゆきみに手を出す部員なんて当たり前にいなくて。
単純に顔が可愛いから密かにみんなの人気者のゆきみ。
「直人先輩?」
「え、あ、いや…。ごめんまた連絡するな」
ポンと頭を撫でると嬉しそうに微笑む後輩。
そのまま「連絡待ってます」って言って去って行った。
ふぅーっと息を吐き出す俺はゆっくりと足をゆきみに向けて一歩踏み出した。
「マネージャー?」
俺の言葉に無言のままジッとこっちを見ていて。
俺は近づいてゆきみの肩にポンッと触れた。
「どしたの?」
「…あたし、邪魔だった?」
低い声で言われて。
うわ怒ってる!?
…なんだろ、この威圧感。
誰にでも同じ態度で特段部員贔屓をしないゆきみだけど、俺とはそこそこ仲も良くてどちらかっていうと、周りの奴らから羨ましがられたりもする。
そんなゆきみが呆れた顔で俺を見ていて。
「いや、そんなことねぇよ。ほら、部室行こうぜ俺着替えて送るから」
肩に手をかけて部室へと誘導する俺にゆきみは大きく溜息をついて「フンッ」って不機嫌丸出しで歩き出した。