Forever6
「言いたくないなら聞かないけど、俺としてはちゃんと知っておきたい。いい加減な気持ちでゆきみを迎えに来たわけじゃねぇし…」
カフェのソファーに座る私の手を握って目の前でそんな言葉をくれる敬浩。
いつにも増して優しいその眼差しにまた涙が溢れる。
話せるだろうか、こんな複雑な気持ち。
曖昧で私だってよく分かっていないこの気持ちを、理解してもらえるのだろうか…
「苦しいなら吐いちゃえよ。俺自信あんの、ゆきみをまた笑顔にするって。騙されたと思って俺を信じろよ…な?」
なによ。
いつも冗談とか下ネタばっかり言ってるくせに、なによこんな時だけ…かっこよすぎるよ。
でも今ここに敬浩が来てくれなかったら私はどうなっていたのか分からない。
それぐらい不安だった。
この世に取り残された孤独を感じて、大袈裟だけど孤独死するんじゃないかってくらい。
人の温もりは温かい。
握ってくれている敬浩の手はとても温かくてホッとする。
直人のものとは違うけど、この温もりを失いたくない…――そう思ってもいいんだよね?
「好きになってもいいの…?」
「いいよ。俺達きっとうまくいく…」
ギュっとテーブルの上で私の手を包み込むように握る敬浩。
その瞳は真剣で、眩しい。
今まで泣いていたのが嘘みたいにホッとしてる。
敬浩の手を小さく握り返した私は、ここ数週間の気持ちを全部吐き出したんだ。
「俺ん家行かない?」
全部を吐き出した私に敬浩が一言そう言った。
え?
い、家…?
キョトンと見つめる私の頬に手を添えて少し距離を詰める。
「ちゃんと抱きしめたい…ゆきみのこと。傍にいてくれない?ずっと俺の傍に…」
潤んだ瞳で見つめる敬浩の声にそっと頷く。
流されてる?
それとも、敬浩に騙されてる?
…騙されたことにして、敬浩を信じることは簡単だった。
目の前にいる敬浩は真っ直ぐに私を見てくれている…それが分かる。
直人もきっと最初はこうだった。
もしかしたら敬浩とも未来なんてないのかもしれない。
でも始まる前から終わりを怖がっていたらきっとこの先誰のことも愛せない。
そんなの寂しすぎるよね。
恋に終わりも年齢もない。
「騙されてみる、敬浩に…」
小さくそう言うと、ハニかんだ笑顔が零れた。
太陽みたいなその笑顔、好きだな…。
初めて入る敬浩の部屋は直人の家よりも広くて高級感が漂っていた。
大人だから、これから起きることは分かってる。
それを分かったうえでここにいるってことも。
だから「シャワー浴びておいで?」そう言われた時、ドキっとして現実に戻ったような気になった。
数えきれない程、直人に抱かれてきた。
今夜直人以外の男に抱かれる私は大丈夫だろうか。
直人とは違うその愛し方を受け止められるだろうか…
「あ、言っとくけど、今日は抱かないよ!」
「え?」
「え?抱かれたかった?」
「まさか!」
「直人くんを想って泣くゆきみを見たその日に、手なんて出せないよ。マジで抱きしめたいだけだから…」
それが敬浩の優しさで、敬浩の愛なんだって。
そんな風に愛してくれる敬浩が居てくれてよかったと思わずにはいられない。
宣言通り、ただ私を抱きしめて眠った敬浩。
私の中で、日に日に敬浩の存在が大きくなっていくのを感じていたんだ。