Forever4
久々に足を運んだフロア。
相変わらず忙しそうな空気が流れている。
ウロウロしていると敬浩に見つかった。
「あれ?俺に逢いに来たの?」
軽いな〜って思いながらも首を左右に振って否定する。
笑顔がほんのり曇ったように見えた。
「ちぇ。直人くんかよ!あっちにいるよ!」
会議室を指差して直人の居場所を教えてくれた。
そのままそっちに行こうとする私の腕を掴まれて。
「どっちが好きかの確認ってわけ?」
「え?どうして?」
「だって普通こないっしょ、元カレに逢いになんてさ。まぁその分俺のこと真剣に考えてくれてるってことにしとくけど!」
間違いじゃないなって思って「うん」一言そう言うと私の腕を離す敬浩。
クシャって前髪を撫でると、ポンポンって背中を軽く押して自分のフロアへと戻って行った。
あ、後ろ姿も普通にかっこいいな…なんてボヤっと思いながらも私の目線は会議室にいる直人に向いていて。
ジッと会議室の外から直人を見つめる。
聞きなれた声と、見なれた外見。
ホワイトボードに書き込まれた直人の文字に思わず頬が緩んだ。
しばらく黙って見ていた私に、ふと直人が気づく。
「あ!」って顔のすぐ後、「ちょっとすいません」そう言うなり、会議室から出てきたんだ。
私の前で止まって。
「どうした?」
聞きなれた声に何だかホッとする。
「あ、ごめんね。特に用事はないんだけど、ちょっと顔見に来た…――いや、ごめんいつもの癖で。迷惑だったよね…」
「いやそんなことないよ。俺もゆきみに逢いたかったから…」
サラリと照れもせずそう言うんだ。
そういえば私、こうやってよく直人の会議を仕切る姿を見に来てたな〜って。
その度にいつも私に気づいて中断して声をかけてくれる直人もあの頃と何も変わってない。
「………」
「あ、いやそういう意味じゃなくて…。いや違っちゃいないけど。ああそうだ、今夜空いてる?ちょっと付き合って貰いたいんだけど。兄貴んとこ子供生まれて、お祝い買いたいんだけど、あんまよく分かんなくて…。飯も奢るよ」
「…うん。お兄さん生まれたんだ!おめでたいね〜」
「だな。んじゃ定時で迎えに行くから!」
ポンポンって当たり前に頭を撫でる直人に微笑むと頬を指でスッと触られた。
付き合っていた頃は何とも思わなかったスキンシップも、いざ別れてみるとなんていうか、
「バカップルだったのね、私達って」
小さな独り言に思わず笑う。
だってこうして社内で誰もが見られる場所でも普通に触れ合っていた。
それが普通だと思っていた。
好きだよ。可愛い。……そんな言葉も直人は当たり前みたいに言葉にしてくれていた。
まるで挨拶みたいに毎日言うから、最後の方は義務みたいに思っていたけれど、そう思っていたのは私だけなのかもしれない。
直人は心を込めてちゃんと伝えてくれていたのに、気づけなかったのは私の方なのかもしれない。
それが、悲しかったのかも、しれないね。