Forever2
「何で別れたの?直人くんと…」
席に着くなり本題って感じに敬浩が私を奥のソファーに座らせてくれてそう聞かれた。
まぁ、聞かれるんだろうなーとは思っていたけど。
「気持ちのすれ違い…のようなもんかな。マンネリ化っていうか一緒に居ても何の感情もない気がして…」
「…マジで?そんなのあるんだ…直人くんでも…」
「…一緒に居ても空気みたいで…」
「え、それってすっげぇいい関係ってことじゃなくて?」
「え?」
「だって空気っしょ?お互いの存在が当たり前でなくてはならないもん…ってことじゃないの?」
そんな風に考えてもみなかったせいか、敬浩の言葉にドキリとしたなんて。
だからといって、今更変わらないこの現実。
空気といえど、直人への愛が戻るなんてこともない。
「3年一緒に居て、結婚までいかなかったんだもん…もう無理だよ、直人とは…」
「そっか。んじゃさ…」
スッとテーブルの上、私の手に敬浩の手が重なった。
見つめる敬浩はいつもふざけているのに今に限って真剣そのもの。
「俺も別れたんだじつは。何か色々疲れちゃって」
「そうなの?あの若い子と?」
イケメン5の敬浩は若い子好きで有名で。
新社のギャルばっかを相手にしていたみたいだけど…
「なんで別れたの?疲れたってどんな?」
「ん〜。どこどこの誰さんとご飯行ったってほんと?浮気してないよね?あたしのこと好き?どれくらい?…そーいうの聞きたくねぇ、もう…」
典型的な束縛タイプか。
確かにずっと聞かされていたら嫌気も刺す。
要するに敬浩は私がそういう質問はしないだろうって思ってるんだと。
確かに…直人に対してそういう言葉を言ったことはなかったかもしれない。
「それはお気の毒さま…」
苦笑いする私の頬を手で包む。
ドキっとする敬浩の真剣な視線に何だか目が離せなくて。
冗談と本気の挟間…のようなこの関係。
「だから俺、ゆきみがいい」
なんの根拠も理由も見えない、軽々しい告白だった。
傷ついた者同士、きっとうまくいくはずだって?敬浩はそう思ってるの?
恋愛に疲れた者同士、いいパートナーでいられるって…?
素直にイエスと言えないのは、まだ私の心に直人が残っているからなんだろうか。
敬浩に言われて新たな一歩を踏み出すチャンスを貰った。
なおかつ、一緒に歩み寄ってくれるって言ってくれているのに…
「少し考えさせて。まだちょっと怖い。誰かを好きになれるのかまだ自信がない…」
スッと頬にある敬浩の手を退かした。
思わぬ展開だったのか?目を真ん丸くしていた敬浩だけど、小さく息を吐き出すと「分かった、待つ。けどこれだけは忘れないで?俺は誰でもいいわけじゃなくて、ゆきみだから選んだんだって…」その言葉は単純に嬉しかった。