Vacation2
「うわ、美味しそうっ!!」
台詞は一切入らないからって、台本はだいたい決まってはいるものの、ほとんど自由にやっていいことになっていて。
浜辺に用意されたBBQの肉や野菜に思わず声をあげる。
可愛らしいワンピースを着て、髪もメイクもして貰って、高級なジュエリーまでつけてもらってこんな素敵な場所で美味しい食べ物。
目の前には愛する直人。
世間一般では許されないこんなデートを、MVってものを通して現実にしてくれた直人。
もう幸せすぎて泣きそう。
「ゆきみ?え、どうした?」
吃驚した直人の声に顔をあげると、視界がクリアになった。
すぐに直人がきて私の頬を指で拭う。
ほんのり眉毛を下げて優しく見つめるその瞳に、愛が溢れる。
「直人大好き…」
「え、」
いきなり言われて目を真ん丸くさせる。
すぐに照れたように笑って頭をポスっと撫でる。
「あんま可愛いこと言わないの!」
「言いたいっ!だって南の島だもん!」
「こらー。チューすんぞ?」
「してして!」
ムゥって唇を突き出してそっと目を閉じると、目の前で直人が爆笑した。
でもすぐに「全くさぁ…」顎をクイッと人指し指で軽くあげられて、カメラを背にそっと顔を寄せる。
チュッて甘いリップ音をたてて顔が離れていく。
あー物足りない!
もっとしたい!!
そんな言葉が思いっきり顔に出ていたんだろうか。
私を見て「夜の台本変えちまおうかっ!?どーする?俺はいいよ?」肩に腕を回されて耳元でボソッと囁かれる。
さすがにそれは。
「直人ずるい!」
「ハハハ!本当に可愛いねお前!」
撫で撫でって髪を撫でられる度に直人の愛を感じる。
そうやって私達は砂浜でのBBQを楽しんだんだ。