君に何度でも恋をする | ナノ

君に何度でも恋をする1


もう二度と恋なんてしない…

なんてドラマや映画に出てきそうなこのフレーズ。

辛い恋を経験した人は、一度はこんな気持ちになるのかもしれない。

けれど恋というものは、しないと決めたからしなくてすむというわけでなく、したいと思ってするものでもない。

そう、恋は―――気づいた時には始まっているものなんだと。

だからどんなに辛い恋を超えた人でも、いつの間にか始まっていることも、あるんだと思う。

あれから3年。

―――私はまた、恋をした。


「どう、かな?」


ウェディングドレスの試着に着ている私達。

こんな風に結婚を急ぐことになったのは彼の転勤が決まったから。

だけどそう、だからこそ私の恋が知らぬ間に始まっていたことに気づいたんだ。


「うん、すごく綺麗。さっきのも可愛かったけど、今のは大人っぽくてちょっと照れちゃう」


目尻を下げてニッコリ微笑む彼に私はぷぅーっと頬を膨らませた。


「もーどれ着ても似合うってさー!一生に一度なんだからちゃんと選んでよー」

「だって本当に全部似合うんだから仕方ないよ」


ニコッて笑ってポンポンって優しく頭を撫でる大きな手。

この手が私の傍から離れてしまうと言われ、涙が出る程離れたくないと思ったわけで。

泣き出す私をギュッと抱きしめて彼が言ったんだ。


「ユヅキ、結婚しよう…。どんなユヅキも愛してるんだ、初めて会った日からずっと…」

「…私でいいの?」

「ユヅキがいいの。俺が何度ユヅキに恋してると思ってる?」

「…何度?」

「何度もだよ!」

「…ほんと?」

「ほんと。やっと俺を見てくれたね、ユヅキ…」


優しい大きな手がそっと私の頬に触れた。

こんな風に彼に触れられることが初めてで忘れかけていたトキメキが私の胸を爆発させる。



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