私の答え1
「私に内緒でサプライズだったの?」
車内で、隣に座っている哲也を見てそう聞いた。
パスポートは哲也に任せてあるって啓司の言葉…
「はは、バレたか」
「啓司はいつから私を許してくれてたの?」
「そんなの、最初からだろ。怒ってたのはユヅキに対してじゃなねぇよ。少なくともアキラに対しては半端なくブチ切れてたけどな。安心しろって、崩れないからこんなことで俺達の友情は」
哲也の言葉に私は小さく頷いた。
さすが元暴走族。
紳士に見える健ちゃんでも、今日ばかりは運転も荒く、完全にスピード違反でごめんなさい!って思いながらも、思いの外想像より早く空港についたんだ。
でも移動のロス時間でない頭でいっぱい色んなことを考えた。
あの日以来、良平くんに逢うのは久々で、緊張していた。
空港のソファーに座っていた良平くんを見つけて健ちゃんが先に近寄って行く。
「アキラ」
「ケンチ、見送りはいらねぇって言ったじゃねぇか、たく…」
ぶっきらぼうに答える良平くんの視線がゆっくりと私に移る。
それと同時に健ちゃんが後ろに下がって哲也と二人、少し離れたソファーに座った。
「ユヅキ、ちゃん…。啓司のヤロウ…」
困ったような表情を浮かべる良平くんの前にそっと立った。
「元気だった?」
良平くんの声に涙が溢れてくる。
だけど泣かないって涙をグッと堪えて微笑んだ。
「うん。そこそこ…。良平くんは?」
「…寂しかったよ、ユヅキちゃんがいなくて…」
ずるいんだから。
女いたんじゃないの?
「啓司と別れた」
「そう…」
「良平くんの悪い癖、なかなか治らないね?」
「え?」
「すぐに逃げるところ…」
私の言葉に苦笑いを零す。
「…ほんと、情けないヤツだな、俺…」
「同じ人に二度も逃げられる私の身にもなってよ?私の気持ち、考えたことある?」
「…ごめん」
「許さない、」
「一緒に来いよ、ユヅキちゃん…」
良平くんの言葉に胸がギュッと締め付けられる。
「…もう、言ってくれないのかと、思った…」
離れたくない、一緒にいたい…―――そう思っているのは私だけじゃないって。
どんな嘘をついても分かる、良平くんの気持ち。
涙を堪えて良平くんを見つめた私の腕を引いて強く抱きしめた―――
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