プロポーズ1
ぐっすり眠った啓司の部屋から出て、健ちゃんに電話をかける。
【もしもし】
「健ちゃんごめんね」
【はは、いーって。気にしないの!それより啓司どう?】
「うん、熱下がらないから明日病院連れて行った方がいいかもって思ってて…」
【分かった。アキラには俺からうまく言っとくから、ユヅキは啓司の傍にいてあげなよ】
「…うん。でも私、傍にいる資格なんてないのに…」
【それはユヅキの問題で。今のあの啓司にはユヅキが必要なんだろ?】
「そうだけど…」
【それとも俺に啓司預けてアキラんとこ行く?】
健ちゃんにしてはちょっとだけ強い口調だった。
本来なら呆れて見捨てられていい状態の私に、それでもこうして諭してくれるのは健ちゃんだからだって思う。
そしてそんな健ちゃんの言葉だからすんなり聞き入れられる私なんだって。
「ごめんなさい。良平くんには心配しないでって、伝えてほしい」
【りょーかい!俺を頼ってくれて嬉しいよ。ユヅキも風邪貰わないようにな?】
「うん、ありがとう」
【じゃあおやすみ】
「おやすみなさい」
ふぅーって、溜息。
自分が何をしたいのか、どうすればいいのか答えが見えない。
啓司と過ごしてきた時間は私にとってかけがえの無いもので。
何にも変えられないものだって。
啓司がいなかったら今の私はいないだろうし、啓司との未来ならちゃんと見えている。
それでも私、良平くんを選ぶの?
こんなに優しくしてくれた啓司を傷つけてまで、良平くんとの見えない未来を選ぶの?
「どう、したらいいのよ…」
身体に残る啓司の愛の証を全て洗い流すように、無心でシャワーを浴びた。
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