優しい嘘1
「あ、私も。私も好き、大好き…」
あんなに躊躇っていた言葉がいとも簡単に言えたのは、良平くんが私を愛してると言ってくれたからだった。
ギュッと良平くんに抱きつくとそのままふわりと抱き上げられる。
目的地はリビングの隣、寝室。
大きなキングサイズのベッドにゆっくりと下ろされる。
そのまま間髪入れずに唇を塞がれた。
熱い吐息で何度となく濃厚なキスを繰り返される。
自分たちの置かれている状況は分かっているけどこの愛を、この行為を止められなくて。
ほんの片隅にいた啓司にパタンと鍵をかけた。
最低な女で構わない。
良平くんから離れたくない…
ただそれだけだった。
「ね、アメリカでガールフレンドはできた?」
ポチャンって湯船で良平くんの上に乗っかってそう聞いた。
何度か2人で絶頂を迎えて、さすがに身体が動かないって早めのお風呂。
この明るい場所で最初は抵抗があったものの、数分すれば慣れてしまうなんて。
「気になる?」
「そりゃ気になるよー。私を置いて行ったんだからぁ」
「ごめんって。罪悪感もあったし、特定の彼女はいなかったよ」
「え?特定の彼女いなかったの?」
「ああ」
「ふぅん。そっか、」
「ユヅキちゃんは…いつ啓司と?」
うなじにちゅって小さなキスを落とす良平くん。
聞いたわりに、ちょっと緊張しているのが可愛い。
「短大の時、初めて2人でデートした。それまではずっとてっちゃんも健ちゃんも一緒で…。あまりにてっちゃんが心配するから初デートでそのまま旅行したの。新幹線乗っちゃえばもう追ってこないって。その2日後に帰ったら啓司がてっちゃんに殴られて、でも最終的には許してくれた」
「なるほど、ユヅキちゃんの思いきった性格は昔からか」
「えー?でもそうなるまでずっと啓司は優しくしてくれて。あの性格だから何もしなくても可笑しくて。付き合う半年前ぐらいには啓司を好きになってたと思う…」
…啓司の話なんて聞くから、良平くんの私を抱く腕に力が入ったじゃない。
耳を口に含んで舌で絡める。
胸に回った手で突起をギュッと摘まれて身体の奥が反応する。
さっきベッドであんなに愛し合ったのに、また抱かれたくなっている自分がいる。
だからくるりと向きを変えると正面から良平くんに抱きついた。
「馬鹿よ良平くん…」
「だな」
目尻を下げて笑うと、強く私を抱きしめた。
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