日本語下手でチャイな恋人1
「ユヅキ!?お前どうした、こんなとこで。ずぶ濡れじゃねぇか!たく連絡よこせよ、飲みに行っちまったじゃねぇか…」
どうしてもどうしても家に帰りたくなくて、啓司の住むアパートに行ったものの、途中で雨が降ってきた。
天気予報雨降るなんて言ってなかったじゃんか、ちきしょう。
傘だけを買う気にもなれず、もういいやって半ば諦めて濡れていたんだ。
啓司に連絡しても地下で飲んでるのか電波は繋がらない。
帰ろうにも身体が硬直して動けなくて、意識が遠のきそうになった所でやっと啓司が私の前に姿を見せたんだ。
「けじ、」
固まる私の肩を抱いて家の中に入れる。
すぐにお風呂を沸かしてタオルで私ごとすっぽりと包み込んだ。
安心できる温もりにそっと目を閉じた。
「なんかあったのか?」
優しく聞く啓司は、抱きしめながらもタオルで身体をギュッとふいてくれて。
なんか、大あり。
良平くんのせいで既にキャパオーバー。
「顔みたくなっただけ」
「ほんとにそれだけ?」
「うん。ね、このままシテ…」
「………」
雨でかじかんで冷たくなった手を啓司の頬に添えると、ゴクッと唾を飲み込まれた。
そのまま目一杯背伸びをして啓司の唇にチュッと触れるだけの小さなキスをした。
拒否すらしないものの、キスを返してくれない啓司にむきになって、舌を強引に入れる。
でも……――――――
「馬鹿はよせ!こんなお前抱けるかよっ!」
そんな大声でもなかったのに、何だか悲しくて。
自分の馬鹿さ加減に。
良平くんに挑発されて頭ん中が真っ白になったなんて。
過ぎた過去の人なのに。
中途半端な過去ほど消化できないものなんだろうか。
「ごめんなさい…」
小さくそう言って俯く私をそれでも優しく包み込んでくれる優しくて大人な啓司。
啓司がいてくれてよかった。
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