私の答え2
久しぶりに良平くんの温もりに包まれて、出逢った日からの出来事が走馬灯のように私の頭を巡っていく。
「海外なんて聞いてない…」
「ごめん。連れて行きたいと思ってたけど、連れて行くつもりはなくて…俺にはユヅキちゃんも啓司もどっちも選べなかった…」
良平くんはそう言うけど、選ばれたのは私じゃなくて啓司だと思う。
そして啓司も、最終的に私じゃなくて良平くんを選んだんだって、思える。
じゃなきゃ今ここに私はいない。
どんなに仲が良いと思っていても、男が絡んだ瞬間、いとも簡単に崩れゆく女の口先だけの生ぬるい友情とは格が違う。
できるのなら私もそこに入りたかった。
同じ男として生まれたのなら、こんな苦しい思いをしなかったはず…
「選んでる、良平くんも啓司も、私じゃなくてお互いのこと選んでるよ…」
「…え?」
「良平くん。私…―――一緒には行けません」
「ユヅキ、ちゃん?」
「今までなんとなく生きてきた。いつだっててっちゃんやみんなに守られてぬくぬく生きてきたの。でもそれじゃダメだと思う。啓司を傷つけてまで良平くんと一緒にもいられないし、良平くんを寂しくさせてまで、啓司と結婚もできない。だから私、一人で頑張ろうと思うの…。ちゃんと胸を張って頑張ってるって言えるまで誰にも頼らない。寂しい気持ちも越えてみせる。だからいつか日本に戻ってきて?その時はまた笑顔で会いたい…」
グッと涙を堪えて良平くんから一歩離れた。
空港に向かう車の中で死ぬほど考えたけど、どっちかを選ぶことは私にもできないって分かった。
どっちを選んでもきっと何かが残ってしまう。
今の甘えた弱い自分じゃ何をしてもダメだって。
こんな私でもいつか誰かをめちゃくちゃ幸せにできるようになりたい。
それからでも、遅くはないんじゃないかって。
私の決意に良平くんは目尻を下げてフワリと微笑んだ。
「そっか。分かった。けど一つだけ…―――俺は、ユヅキちゃん以上にいい女はいないと思ってる。初めて逢った学生のときも、再会したときも、俺の心はいつだってユヅキちゃんを好きになってるから。だからいつか―――またユヅキちゃんに三度目の恋をしに、帰ってくる…」
「…私、待たないよ?」
「いいよ、それでも、俺は何度だってユヅキちゃんに恋する運命だって勝手に思ってるから」
「その言葉に似合う女になれるように頑張る。…楽しい時間をありがとう。良平くんと過ごした時間はいくつになっても私の宝物には変わりないから…」
「俺も、ありがとう…―――お別れのキスは、あり?」
ちょっとだけ照れくさそうな良平くんに、背伸びをして私からキスをした。
軽く触れ合った後、小さなリップ音を立てて離れるとオデコが重なる。
「ごめん、もっとちゃんとさして」
良平くんの腕が強く私を抱き寄せてその腕の中、熱い唇が何度も重なり合う。
哲也も健ちゃんも、良平くん以外の誰も頭に入らなかった。
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